創業融資で税理士を使うメリットと税理士の選び方

この記事を書いた人
工藤聡生

公認会計士・税理士
元銀行員、20年にわたり、創業融資、銀行融資、VCからの資金調達を支援てきました。資金調達の累計額は、100億円以上です。

創業融資が得意な税理士は、なにをしてくれるのか?

ずばり列挙すれば、

  1.  創業者に理解のある審査担当者への紹介
  2.  創業計画書、資金繰り計画の作成支援、または、作成代行。創業者に作らせてアドバイスするだけか、または、まるごと作ってくれるかは、会計事務所によって異なります。作成代行までやってくれた方が、起業家は、楽だしより安全でしょう
  3.  自己資金が不足している場合のアドバイス
  4.  信用情報にちょっと傷がある場合の乗り切り方のアドバイス
  5.  事業経験のアピール方法
  6.  セールスポイントのアピール方法
  7.  面談での想定問答のコーチング
  8.  融資実行までの期間短縮

リアルな創業計画書、資金繰り計画をつくってくれるかどうかは、結構大切です。
日本政策金融公庫の審査担当者は、金融のエリートですから、適当につくった計画書は、すぐに見抜きます。
創業融資の可否は、提出する創業計画書の出来不出来に強く影響されます。
創業計画書とは、創業者のための事業計画書です。
創業融資に強い税理士は、創業計画書の作成を手伝ってくれます。
とくに資金繰りの計画のところは、その創業者のビジネスプランを反映した、オーダーメイドの計画を作る必要があります。
他の計画のコピペでは、創業計画書は、作れません。
創業計画書は、経営の核心であり、経営能力そのものです。
よい創業計画書を作るためには、起業家と向き合って、あいまいな思考を排除し、リアルな事業計画を作り、起業家の経営力そのものを強くする必要があります。
経営者の動機付けや強みにあったターゲットに経営資源を集中し、明確なビジネスモデルを確立し、十分に考え込んだ売上予測に基づき損益計画を策定し、資金ショートを絶対に起こさない資金繰り計画を策定する必要があるのです。
言い換えれば、起業家が永続的に生存できるように、真剣にアドバイスをしてくれるということです。
まともな税理士であれば、お金が借りることができればよいというアドバイスはしません。
創業計画書が甘ければ、結局、ビジネスはたちゆかず、借金が残るだけだからです。
それは、起業家のためになりません。
創業融資に強く、良心的な会計事務所なら、『あと少し事業経験を積んでから一緒にチャレンジしましょう』とか、『もうちょっとお金をためてから、半年後にチャレンジしよう』とか、時には、相手を怒らせかねないようなアドバイスをすることすらあります。
それが、起業家のためだからです。

残念ですが、ほとんどの税理士は、創業計画書が作れません

ほとんどの税理士は、創業計画書や事業計画の作り方そのものがわかりません
会計、申告作業と事業計画書作成とは、かなりかけ離れた異質な作業だからです。
ですので、創業計画や事業計画の作成には、独自のノウハウが必要です。

また、創業融資の支援をすると喧伝している税理士の多くも、定型フォームをつかった個性のない創業計画書しか作ってくれません。
オリジナルの創業計画書は、手間がかかるからです。
とくに会社設立で高い広告宣伝費を払って集客している会計事務所は、大量生産をしなければならないので、定型フォームをつかった、簡便な創業計画書しか作ってくれません。
定型フォームをつかった創業計画書は、ほかの会社でもそのまま使えてしまえそうな表面的な計画なので、創業者の真剣度が審査担当者に伝わりません。
成功率は確実に落ちます。
依頼した専門家が、定型フォーマットに入力を始めたら、依頼を中止した方がよいでしょう。
かれは、税理士顧問契約をとるために創業計画書をつくっているだけで、お客を生き残らせるために貢献しようとはしていません。
創業融資サービスは、成功報酬のところが多いので、途中で依頼を断っても実害はありません。

その他にどんなバックアップをしてくれるのか?

審査プロセスにおけるバックアップがもっとも大切でしょう。
もっとも大切なのは、審査担当者の言葉遣いから、面談の前に、問題点を感知して、対策を一緒に考えることです。
うまくいかなくなりそうになったときに一緒に悩み、もがいてくれる専門家が必要なのです。
金融の仕組みを知っている税理士は、審査担当者とのやりとりのなかで創業者を支援します。
試験の前に出そうな問題を予想して、答えを教えてくれるのです。

会計事務所側は、審査で問題となりそうなところを把握しておかなければならないので、創業者の人柄やバックグランドなど、諸材料を仕入れておかなければなりません。
創業融資に実績のある税理士が、面談を必ず行ってから、創業融資のサポートにはいるのはこのためです。

また、日本政策金融公庫と提携している会計事務所の場合は、審査担当者から追加資料等について何回も電話がはいります。
そういった場合に、税理士から創業者に関して肯定的な情報が提供されると審査担当者も安心してくれます。
創業融資に実績のある税理士は、嘘のない範囲で、創業者寄りの情報を発信してくれます

銀行宛てに推薦状を発行する税理士もいますが、こういった形式的な文章は、効果がありません。
推薦状は、銀行の内部審査では、無視されるので、推薦状を発行したところで、審査の結果には、まったく影響がありません。

当事務所では、懇意の審査担当者へ、直接にご推薦させていただいております
そのため、ベテランの融資担当者が、最初から好印象をもって対応してくれますし、審査が1週間ぐらいは、はやまることがあります。

どうやって会計事務所を選べばよいか? 代行までしてくれるか?実績は?

創業融資について実績があり、日本政策金融から信頼されている税理士を選ぶべきでしょう。
どの税理士も、実績があると言うので本物を選ぶのはちょっと難しいのですが、簡単なチェックのしかたをご伝授しましょう。

1 創業計画書を単に作成支援するだけか、作成代行までしてくれるか?

創業計画書を作ったことがない人に、アドバイスするから作ってみろと言われても、大部分の方は、戸惑うのではないでしょうか。
事業経験の強みやセールスポイントを文章にするのはとても大切なのですが、専門家に書いてもらった方が確実でしょう。
作成代行までやってくれる会計事務所の方が、起業家は、安心でしょう。

2 応接に日本政策金融公庫のカレンダーが置いてあるかどうかを確認してください。

カレンダーが置いてあれば、日本政策金融公庫の担当者が定期的にあいさつに来ているということですから、実績があるということです。
ホームページをチェックしても、実績がある事務所かどうははある程度は判断できます。
その際に、オーダーメイドの手作りの創業計画書を強調しているかどうかも調べてください。
審査担当者は、オーダーメイドのリアルな創業計画書を好むからです。

3 銀行勤務の経験のある税理士なら、なおさらOKです。

金融機関の審査論理は、やはり、一度内部にいたことがないとわかりません。

4 高額融資や満額融資を目指す姿勢の事務所を選ばれてください。

緻密な創業計画や資金繰り計画をつくれば、高額融資や満額融資は、難しいことではありません。
逆に、ざっくりとした計画だと、審査担当者がリスクヘッジをして、減額されることが多々あります。
資金不足は、事業規模の縮小を意味しているので、事業が最初から躓くおそれがあります。

5 面談でのリアルな想定問答を指導してくれる事務所を選んでください。

創業後は、銀行との付き合い方は、おのずから身につくでしょうが、初めての面接には、適切なガイダンスが必要です。
おざなりな想定問答ではなく、その起業家に特有な問題に対応した具体的な想定問答である必要があります。
とくに、日本政策金融公庫から信頼されている会計事務所は、事前に問題となりそうなポイントを把握してくれるので、個別具体的な面談対策を立てることができます。

6 付き合いの懇意の審査担当者を紹介してくれるかどうか

日本政策金融公庫に勤務しておられる方は、金融業界のエリートですし、内部的なコンプライアンス手続きに厳重に縛られています。
ですので、特定の会計事務所から紹介をうけたからといって審査基準が曲がることはありません。
ただ、審査担当者も人の子です。創業融資の実績のある懇意の会計事務所から紹介をうければ、良い先入観をもつことはあっても、悪い先入観を持つことはありません。
これは、審査のプロセスでは、とても有利に働きます。
おざなりに日本政策金融公庫のある支店を紹介するのではなく、付き合いのある審査担当者を紹介してくれる会計事務所を選びましょう。
また、創業融資に長けた税理士は、創業者に理解のある担当者を発掘しようと常に努力しているので、ネット申込をして謝絶率の高い担当者にあたるリスクは避けられます。

創業融資の面談には、税理士も同席してもらった方がよいのか?

税理士の同席は、お客にアピールするパフォーマンスにはなりますが、実際には、審査担当者の評価を下げてしまいます。
自力ではビジネスプランを説明できないという弱い印象を逆に審査担当者に与えてしまうからです。
また、審査担当者にとっては、税理士の同席は、障害となることがあります。
聞きたいことが聞けなかったりすれば、それが疑念となり、評価を下げられてしまいます。
このことは、銀行勤務経験があり、金融機関の意思決定プロセスがわかっていれば、簡単に理解できることですが、税理士のなかにはこのことを理解しておらず、同席することにより、逆に創業者の足をひっぱってしまうことがあります。

当事務所は、文字通り何十人もの日本政策金融公庫の担当者とお話しをしてきました。
わたしが元銀行マンであるというと、ほとんどの方が、安心して本音をしゃべってくれます。
専門家が同席をして余計な発言をした場合、借入申込者への心証が悪くなることはあっても良くなることはないと、公庫の方々はおっしゃっています。
ひとことで言うと『いや』なのです。

むしろ、当事務所がやっているように、事前に、審査となるポイントを聞き出して、対策をたてたほうが、はるかに効果があるのです。
あるいは、われわれ専門家から審査担当者にあとで電話をいれてフォローした方が、心証の改善には、有効でしょう。
融資の審査は、試験のようなものです。
試験の最中に、横にだれか座っていても実は、まったく役に立ちません。
回答するのは、創業者だからです。
むしろ、事前に、試験内容を教えてくれるコンサルタントの方が、はるかに役立ち、試験の点数の劇的改善に役立つのです。

general

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