公認会計士・税理士
元銀行員、20年にわたり、創業融資、銀行融資、VCからの資金調達を支援てきました。資金調達の累計額は、100億円以上です。
創業融資は、創業前を創業後のいつ申し込むべきか?
- 起業前のほうが資金調達はしやすいという話を聞きました。
理由がよくわかりません。
逆のように思えるのですが…
創業後だと借りられなくなるのでしょうか? -
銀行は、通常は、会社の実績を見て融資の可否を判断します。
実績とは、決算書です。
ですので、実績が一切ない、創業前の方が借入しやすいというのは奇異に聞こえると思います。
創業企業は、実績がないので銀行はまずプロパー資金は貸してくれません。
公的な資金を活用せざるを得ないのが実情です。
公的金融機関が提供する創業融資においては、過去の経営実績が審査ポイントなっていません。
重要なのは、事業経験、創業計画書の内容、自己資金、信用情報、面接時の対応です。イメージを掴んでいただくために簡単に説明いたします。
事業経験は、創業しようとしている事業における経験のことです。
経験が豊富なほど、審査担当者は高く評価します。創業計画書とは、審査のために提出する経営計画です。
創業融資は、過去の経営実績がないので、この経営計画の内容で融資の可否が決定されます。
創業計画書は、創業動機・市場の選択・創業者の営業力・潜在顧客リスト・事業フロー・損益計画のち密さ・資金使途と返済財源等々のポイントがチェックされます。自己資金とは創業者が貯めてきたお金です。
自己資金が多いと、創業に向けてきっちりと準備してきたと思ってもらえます。
創業資金総額の20%代後半が用意されているのが望ましいとされています。創業融資は、書類審査だけでなく面談も行われます。
面談における真摯で粘り強い対応も重要なポイントです。
以上のように、公的な融資制度である創業融資では、本来は創業後の経営実績は審査ポイントとなっていないのです。企業は創業直後には赤字に陥りやすい傾向があります。
理由はさまざまです。
売上が、目標額に達成するには相当な時間がかかります。
また、当初は、顧客確保のために余計に販促費がかかったりします。
売上が伸びなくとも人件費や地代などの固定費は発生してしまいます。
創業企業は、想定外の事象により、創業計画よりも赤字額や赤字期間が想定を上回ることがあります。
創業直後は、潜在的に実力のある会社でも赤字になりやすいのです。
創業後に申込をすると、数カ月分だけでもよいので、決算書をみせてほしいとか、入金状況をみせてもらいたいといわれることがあります。
審査担当者としても当初赤字になるのはわかっていることだけれども、実際に大赤字の状況を見ると良い印象は持てません。
以上の理由から、実績が出る前に、すなわち創業前にお金は借りた方がよいのです。
創業後でも借りられないということはありませんが、不利になってしまうのです。
もともと経営実績は考慮外なのに、創業後だと経営実績が発生してしまい、減点評価の対象となってしまうことがあるからです。とくに、創業後から半年を経過すると、その時点までの月次決算書の提出は、ほぼ確実に求められます。
審査は、審査担当者の主観的な判断によるところもあり、創業後4~5カ月でも提出を求められてしまうこともあります。
できるかぎり、創業融資は、創業前に申込をするべきです。少なくとも、創業後3カ月以内には、申込をするようにしましょう。
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