公認会計士・税理士
元銀行員、20年にわたり、創業融資、銀行融資、VCからの資金調達を支援てきました。資金調達の累計額は、100億円以上です。
日本政策金融公庫に断られる理由
以下、日本政策金融公庫の創業融資に失敗する主な原因と対策についてご説明いたします。
謝絶の履歴は、残ってしまいますので、以下の記事を参考として入念に準備をされてください。
理由1 自己資金の不足
自己資金が少ない場合は、創業融資の審査では、厳しい判断をされます。
自己資金とは、自分で貯めたお金です。
創業融資は、実際には、自己資金の2倍から3倍しか貸してくれません。
自己資金は、そのかたの創業を準備するための行動、あるいは、資金管理能力として判断されるからです。
半年分の通帳を精査されるので、知人からの借入やカードローンで一時的に調達したお金を自分で貯めたものと見せかけようとしても、簡単にばれてしまいます。
自己資金が少ない場合は、親からの資金贈与、親族や友人からの出資や、現物出資などにより、できるだけ資本を増強してください。
親族や友人からの出資は、見せ金と思われやすいので、共同事業だという説明を計画に必ず加えてください。
現物出資とは、会社の事業に使われる車や設備などの現物を出資して資本金を増強する行為です。
それでも自己資本が不足する場合は、会社の強い将来性を売り込むしかありません。
見込み客や卓越した営業力があることをうまくアピールできれば、少額な自己資金でも十分な資金を借りることができます。
この戦術をとるときは、見込み客リストや、営業実績資料の作り込み方が大切となるので、できれば、経験のある専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
理由2 信用情報に傷がある
信用情報に問題がある方は、融資の審査は、不利となり、ほとんどの場合、謝絶されます。
具体的には、次の場合は、返済能力に疑問を持たれるので、厳しい目で見られてしまいます。
- カードローン、キャッシング、消費者金融ローンの残高が自己資本と比べて大きい
- 債務整理(破産)や数度の滞納の履歴がある。
延納があった場合は、残高がなくとも、信用情報に記載されてしまいます。
延納の事実は、大きなマイナスとして働きます。
ただ、直近6カ月に、遅延がなく、かつ、自己資金と事業経験がある程度そろっていれば、創業計画書次第では、借りられることもあります。
ただ、異動情報が、信用情報として残っている場合は、まず、融資審査は通りません。
時がたち、異動情報が消えるのを待った方がよいでしょう。
異動情報とは、
- 5年以内に、61日以上の延滞がある
- 5年以内に、クレジットカードの強制解約、債務整理、代位弁済があった
- 10年以内に、自己破産した
などの事実のことです。
個人情報は、CIC(https://www.cic.co.jp/)で簡単に確認できます。
スマホからでも確認できます。
不安な方は、確認しておいてください。
なお、住宅ローンや教育ローン残高は、融資審査に影響することはありません。
理由3 税金が完納されていない
個人で事業をしていた場合、確定申告をしたときの税金の未納があると謝絶されます。
また、延滞の事実があっただけでも、審査は不利となります。
税金は、ほかの一般債権に優先する債権であり、借入返済に先立って徴収されてしまうということもありますが、それ以前に、日本政策金融公庫は、100%政府出資の公的金融機関であり、創業融資の原資は、国の税金ですので、その税金をはらっていない人には貸せないということです。
そもそも、税金の支払いというのは、コンプライアンスの根本であり、重大なコンプライアンス違反がある方には、貸すことができないというのが、金融機関の原則的な考え方です。
理由4 公共料金などに支払い遅延がある
水道光熱費などの公共料金、家賃、電話料金の支払遅延がある場合も、支払い能力に疑いを持たれるため、審査は難しくなります。
これらの事実は、過去半年から1年分の通帳を精査されて把握されます。
したがって、その期間は、支払遅延がないようにしてください。
また、通帳からカードローンを借りていることがわかってしまうこともあるので、気を付けてください。
理由5 創業計画書が幼稚
創業融資は、事業実績は問われずに、自己資金と創業計画書だけで融資の可否が判断されます。
ですので、その創業計画書で手を抜いたら、審査担当者は、『大丈夫だ』と思ってくれません。
『大丈夫だ』という心証が形成されないと、お金は貸してくれません。
創業計画書で失敗された人は、次のような失敗をされています。
- 売上根拠があいまい。
- 事業内容の不明瞭で、説明もあいまいでわかりづらい。
- 売上の規模や予測と原価、人件費、地代、販促費等がバランスしていない。
- 資金繰り計画を提出していないか、あっても幼稚である。あるいは、資金繰り計画の内容を聞かれても、まともな説明ができなかった。
- 記述が下手で、事業経験の強みの売り込みが弱く、起業する事業の差別化要因も伝わらない。
理由6 面接での失敗
繰り返しになりますが、創業融資は、自己資金と創業計画書だけで融資の可否が判断されます。
その創業計画書をきちっと説明する場が、面談です。
そこで、審査担当者の疑問を解消して、こちらの事業計画を理解してもらおうという努力を怠れば、よい結果は、生まれません。
面談での失敗をまとめると次のような類型に分類できます。
- 言葉遣いや態度に問題がある。
- 動機づけや熱意がまったく感じられない。
- 創業計画書の中身を聞かれても、まともな返答ができない。
- 審査担当者の質問をはぐらかして、ピント外れな回答を続ける。
日本政策金融公庫の創業融資に失敗した場合の対策
まずは、原因を把握することから始める必要があります。
原因によって今後の対策は、変わってくるからです。
自己資金が問題なら、現実的な方法は、貯めてから出直すことです。
ただ、自己資金をすぐに追加調達できない場合も、事業経験のアピールの仕方を変えたり、潜在顧客リストを見せることによって営業力をアピールしたりして、リカバリーできる場合もあります。
信用情報に問題があるなら、時の経過を待って信用情報が消えるのを待つしかありません。
信用情報は、登録期間があるので、時が経過すれば解決します。
創業計画書が不十分であるなら、創業計画書を練り直し、ロールプレーをして、より的確に説明できるようにすれば、乗り切ることができます。
断られた場合には、一般的には、半年待って再度、挑戦することになります。
その間に、パイロット的に売上が少しでも上げられるなら、トライしてみてください。半年間の売上実績は、大きなアピールとなります。
実際に売る能力があるということを証明できるからです。
創業融資の申込者は、青写真ばかりなので、売上実績は審査担当者への大きなアピールとなります。
日本政策金融公庫の創業融資に失敗する原因は、たった一つというよりも、いくつか要素が複合的に組み合わさった場合の方が多いです。
したがって再チャレンジも、いくつかの対策を組み合わせて対応することになります。
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