東京都の女性・若者・シニア創業サポート事業による創業資金調達

この記事を書いた人
工藤聡生

公認会計士・税理士
元銀行員、20年にわたり、創業融資、銀行融資、VCからの資金調達を支援てきました。資金調達の累計額は、100億円以上です。

創業融資というと、日本政策金融公庫や信用保証協会を活用した制度が、一般的ですが、それとは、まったく別の創業融資制度もあります。
東京都が、独自に、女性、若者(39歳以下)、シニア(55歳以上)の方に向けて、創業融資を提供しています。
起業家が、地域創業アドバイザーの助言が受けられるのが特徴です。
以下、この融資制度の概要とメリット、デメリット、課題についてご説明します。

対象者

  • 創業予定または創業5年未満。創業後かなりの期間がたっても対象となっています。
  • 女性、若者(39歳以下)、シニア(55歳以上)。40歳から54歳までの男性が除外されています。
  • 東京都内に本店を置き、地域の需要や雇用を支える事業であること。地元で雇用をつくってくれる地味なビジネスをイメージしてください。時代の先端を行く独自性の強いITモデルなどは、なじみません。

こられの条件を満たせば、NPO法人や一般社団法人も対象となります。
大企業の子会社や、反社、税金をはらっていない方、風俗営業は、対象とはなりません。

融資条件

  • 借入限度額 1,500万円(運転資金のみは、750万円)
    女性の場合:2,000万円(運転資金のみは、1,000万円)
  • (返済期間 設備資金、運転資金ともに10年以内です。実際は、設備資金は上限10年、運転資金は上限5年とされるのが一般的です。
  • 据置期間 3年以内です。実際の上限は、1年ぐらいです。
  • 金利 1%以下。かも、保証料ゼロです。
  • 自己資金 形式的には要件は設定されていませんが、実際の審査では求められます
  • プロバー融資に近い融資なので、募集要項には必ず目を通してください。

借入限度額は、大きいですが実際の融資額はかなり限度額を下回ります。

保証、担保

代表者が連帯保証人となる必要がある場合があります。
担保は不要です。

取扱い金融機関

地域創業アドバイザーから創業計画書について無料相談を受けてから、信用金庫、信用組合へ申し込みます。
信用金庫、信用組合は、地域創業アドバイザーの意見を参考に、創業計画書を審査し、融資実行をします。
地方銀行では申し込むことはできません。

地域創業アドバイザーの役割

この融資制度では、創業計画書の作成等について地域創業アドバイザーが助言する仕組みとなっています。
このアドバイザーとの面談は、数回は必要とされ、数週間を要します。
融資実行は、この期間だけ遅れます。
これが、この融資制度が日本政策金融公庫の創業融資に比べて時間がかかる要因です。

地域創業アドバイザーは、融資実行後も経営アドバイスや決算書作成アドバイスなどのサポートを最大5年間、提供します。

融資実行までの期間

2ヶ月前後かかります。
地域創業アドバイザーと数回、面談して創業計画書を作成して申し込むまで1ヶ月、申し込んでから融資実行まで1ヶ月、合計2か月です。

審査

融資を申し込んだ信用金庫等が審査を行います。
地域創業アドバイザーのサポートを受けたからといって必ず審査を通過するとは限りません。
審査は、地域創業アドバイザーのサポートを受けたことを考慮はしますが、あくまで信用金庫等が独立的かつ客観的に行います。

メリット

金利は、1%以下に抑えられています。しかも信用保証料はゼロです。
他の創業融資制度と同様に、創業計画書を提出しなければなりませんが、地域創業アドバイザーが無料で相談にのってくれます。
創業サポート事業による融資は、創業助成事業という上限300万円の助成金を受けるための要件の1つです。他の申請要件を満たせば、この助成金を受給できます。

デメリット

その地域で雇用を創出できる事業である必要があります。
ユニークで先鋭的なITモデルなどは、適合しません。

形式上は、自己資金要件はありませんが、実際の審査では、求められます。
自己資金がなくても必ず通る融資制度ではありません。
融資実行までは、だいたい約2か月ぐらいです。日本政策金融公庫に比べると、倍近い期間を要します。

信用金庫や信用組合によっては、一部の信用金庫を除き、あまり積極的ではない印象があります。
まず、現場がいつも取り扱っている信用保証協会を利用した融資とは異なり、手続きに慣れてないので、現場の担当者がいやがる場合があります。
さらに、貸倒になった場合に、金融機関が被る負担額が、制度融資よりも、大きく、なおかつ、金利も1%以下なので、うまみがありません。
これらの理由から、担当者が、信用保証協会を利用した創業融資を薦めてくることもあります。
しかも、信用金庫や信用組合によっては、本部決裁となっています。
そのため、時間がかかるうえに、本部の判断で断られてしまうことがあります。
この融資制度は、東京都から預託された融資原資により支えられています。
そのため、東京都の年度予算が終了してしまい、断られる場合もあります。

当事務所からのアドバイス

なによりも、代表者が連帯保証人となる必要がある場合があり、かつ、融資実行まで時間がかかる点が難点です。
資金調達まで時間がかかるということは、その間、売上が立たないことを意味し、連帯保証人になるということは、会社が武運拙く倒産した際に、社長個人が借金の肩代わりをしなければならないということです。
時間的に余裕があり、資金繰りも苦しくはなく、将来の倒産リスクがまずないという確信をもった起業家なら、金利が安いので、お薦めの融資制度です。

活用するにしても日本政策金融公庫の創業融資との組み合わせをご検討されるべきでしょう。制度の利用状況とみれば、やはりもっとも利用されているのは日本政策金融公庫の創業融資です。利用実績は、像と蟻ぐらいの差があります。その分だけ、まだ未成熟な部分のある融資制度です。ですので、公庫で融資調達額が不足したら、この制度を検討されるべきでしょう。

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