千代田区の創業融資制度について

千代田区の創業融資制度
この記事を書いた人
工藤聡生

公認会計士・税理士
元銀行員、20年にわたり、創業融資、銀行融資、VCからの資金調達を支援てきました。資金調達の累計額は、100億円以上です。

千代田区の『起業資金』について

千代田区の創業融資は、『商工融資あっせん制度』の中の融資制度の1つとして提供されています。千代田区の商工融資あっせん制度は、千代田区、東京信用保証協会、指定金融機関が協調して中小企業に融資する制度です。
区が指定金融機関に一定の資金を預託することにより、指定金融機関は、区の定める条件の範囲内で中小企業に融資をしてくれます。
必要に応じて、信用保証協会が保証を提供して融資を実現します。
さらに、区は利子の一部を負担してくれます。
いくつかの制度がありますが、ほとんどは事業を1年以上営んでいることが条件となっています。

その中で、『創業資金』と言われる制度は、創業企業を含めて事業期間が1年未満の中小企業を対象としています。
なお、千代田区で創業する方は、日本政策金融公庫の創業融資、東京都の創業融資も利用可能です。

千代田区の創業資金の概要

代表者区分(借主です)区民 ※一般の場合は、やや条件が厳しくなります。下記注意書き参照のこと。
起業場所千代田区に限ります。
資金使途営業資金または設備資金(設備資金については見積書が必要です)
融資限度額2,500万円。詳しくは、起業前の個人は2,000万円、起業後1年未満個人は2,500万円、法人の場合は、起業前から1年未満は1,500万円です。
名目利率1.8% 
利子補給率1.4%
利子の本人負担率0.4%。名目利率から利子補給率を控除した利率です。
融資期間7年以内
据置期間12ヶ月以内
返済方法元金均等割賦返済
保証料補助全額補助
その他の条件融資実行後6か月が経過した時点で、中小企業診断士による経営のフォローアップ診断を受ける必要があります。

 ※区民以外の一般の方の場合は、要件はやや厳しくなります。融資限度額が1,000万円となり、保証料補助は、東京都融資制度の要件を満たせば、東京都の信用保証料補助である3分の2補助が受けられる場合があります。ただし、町会加入企業等は、限度額が1,500万円となります。

千代田区の『起業資金』は、保証人、担保が必要か?

法人の場合は、代表以外の連帯保証人は不要です。しかし法人の代表は、会社の連帯保証人となる必要があります。
個人の場合は、個人が責任をもつので、連帯保証人は不要です。
担保は原則不要です。

利用できる方

  • 創業前の企業:原則として1か月以内に新たに個人で、または、2か月以内に新たに会社を設立して、起業しようとする具体的計画を持つ方。ですので、遠い将来に起業を予定している方は対象外です。
  • 創業後の企業:起業して1年未満の個人、会社も利用できます。
  • 起業場所は区内に限ります。
  • 最近1年間に納付すべき事業税または住民税(ここでは特別区民税または市町村民税をいう)を完納している方。
  • 起業する場所および法人名や屋号(個人の場合)が決まっていること。

利用できない方

  • 金融業、遊興娯楽業のうち風俗関連営業、宗教法人など、東京信用保証協会の保証対象外の業種を営んでいる方。NPO法人も保証対象業務を営む場合は、対象となりえます。
  • 資金使途が税金の支払・債務の補填・生活資金・住宅資金・投機資金・出資金・株券その他の有価証券の取得金等の場合。資金使途が不明確、または確認できない場合

千代田区への申込の仕方

申込は予約制です。電話で予約のうえ、来庁する必要があります。初めての申込の場合、金融機関や会計事務所等が代理で申し込むことはできません。
担当部署は、下記の通りです。

まずは、中小企業診断士と数回、面談をすることになります。(所要時間は約40分。初回は午前9時~。その後は1時間単位で最終回は午後4時~)。面談を重ねながら、必要書類である創業計画書を作成します。 
創業計画書の記入の仕方は、経営相談員が説明してくれます。
フォーマットは、『千代田区のホームページ』からダウンロードしてください。

担当部署

地域振興部商工観光課経営相談・融資担当
〒102-0074 東京都千代田区九段南1-6-17 千代田会館8階
電話番号:03-5211-4344(受付:平日9時~17時)
ファクス:03-3261-5908

千代田区への申込の際の必要書類

  • 千代田区商工融資申込書 『千代田区のホームページ』からダウンロードしてください。記入方法がわからなければ、区役所で融資相談員に相談に乗ってもらいながら、記入することも可能です。
  • 確定申告書・決算書 創業前あるいは一期目が終わっていなければ提出不要です。明細書や内訳書等すべて添付してください。税務署受付印または受信通知等により税務署の受理が確認できる必要があります。決算後6か月を経過している場合は、前期の決算後から最近3か月以内までの試算表または前々期の確定申告書・決算書を追加でご提出ください。
  • 見積書 設備投資がある場合です。コピー可。宛先は法人の場合は法人宛、個人の場合は屋号を記載してください。業者の記名があり、発行後三カ月以内かつ有効期間内のもので、納品場所または施工場所の住所が明記してあるものが必要です。
  • 法人事業税納税証明書(法人の場合、都税事務所発行) 法人事業税が非課税の場合は、代わりに法人都民税納税証明書をご提出ください。納税証明書の代わりに領収証書をご提出いただけます。
  • 商業登記簿謄本(法人の場合) 履歴事項全部証明書、3か月以内発行のもの
  • 特別区民税・都民税納税証明書(個人の場合、千代田区発行) 1年間分必要です。課税基準日に千代田区外に住んでいた方は特別区民税・都民税(事務所・事業所分)納税証明書を提出します。納税証明書の代わりに1年間分の領収証書をご提出することができます。
  • 区民であることを確認できるもの マイナンバーカード・運転免許証・国民健康保険証書等住所を確認できるもの
  • 経営相談員との面談で準備・作成した資料

千代田区の申し込み後から融資までの流れ

  • 創業資金の場合は、1ヵ月ぐらいかけて中小企業診断士と創業計画書を作りこんでから、千代田区商工融資申込書等と一緒に正式に書類を提出します。
  • 書類を提出すると、区の審査終了後に申し込まれた方へ金融機関宛てのあっせん書、および提出書類が渡されます。あっせん書と必要書類を金融機関に提出します。
  • 書類を受け取れる時期は、申し込みの受付から3営業日後以降です。
  • 融資あっせん書の有効期限は、1カ月以内ですので、取得後は早めに動いてください。
  • 金融機関が経営内容について審査し、融資の可否を決定します。ただし、金融機関が東京信用保証協会の保証が必要と認めたときは、保証協会の保証を要します。この場合は、東京信用保証協会でも審査が2重に行われます。融資が実行されるためには、両方の審査に通る必要があります。
  • 東京信用保証協会の審査では、事務所の現地調査が実施されます。
  • 審査の結果、希望する融資が受けられない場合があります。
  • 両方の審査を通ってはじめて、金融機関と金銭消費貸借契約書、東京信用保証協会とは信用保証委託契約を締結し、融資が実行されます。
  • 千代田区への申し込みから、融資の実行(着金)までの期間は、約3ヶ月です。

指定金融機関一覧

千代田区は、すべての金融機関と協調している訳ではありません。
千代田区の起業資金を利用できる金融機関は、限定されています。
千代田区のホームページ』で指定金融機関一覧を確認してください。
指定金融機関の銀行窓口では、申し込みできません。

まとめ

メリットとしては、金利が0.4%と安いことと、信用保証料が全額補助されることです。日本政策金融公庫の創業融資の金利が2%前後なので、金利負担はかなりお得です。
デメリットは、いくつかあります。
まず、無担保、無保証が原則ではないということです。会社の場合、多くの場合、経営者が保証人とならなければならないので倒産した場合に免責されません。
次に、融資実行が遅い点です。区のあっせんを受けるためには、経営相談員の面談が数回必要とされていることと、多くの場合、金融機関と信用保証協会の両方の審査が必要となるためです。日本政策金融公庫の創業融資に比べて融資実行が約2ヶ月遅れます。そのため、区の創業融資だけに頼っていると創業時期がその分遅れて売上機会を喪失します。金利の安さを考慮しても、この遅れは問題です。ですので、日本政策金融公庫の創業融資のバックアップとして使うべきでしょう。
三つ目のデメリットは、融資実行後6カ月後に中小企業診断士のフォローアップ診断を受けなければならないことです。準備をしたり、診断を受けたりする時間を取られます。

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