創業融資と補助金・助成金をうまく使って創業する方法は?

この記事を書いた人
工藤聡生

公認会計士・税理士
元銀行員、20年にわたり、創業融資、銀行融資、VCからの資金調達を支援てきました。資金調達の累計額は、100億円以上です。

会社が、売上低迷のため倒産しました。
50歳を超えており、再就職が難しく、また、以前からの夢でもあったので、創業したいと考えています。
潰れた会社には、10年ほど勤めていました。
事業のやり方はある程度はわかっているつもりですが、自己資金は400万円しかありません。
ですので、融資や助成金をつかって不足する資金を補てんしたいと思っています。
融資の受け方や助成金のもらい方を教えてください。
必要な資金の内訳は、設備投資に400万円、月々の経費が人件費込みで200万円、当初の販促費には、200万円ほど必要です。

助成金については、トライアル雇用奨励金、特定就職困難者雇用開発助成金、均衡待遇・正社員化推進奨励金、両立支援助成金等々、さまざまな制度があります。
ハローワーク等の相談窓口にいけば、親切に教えてくれます。
補助金にもさまざまな制度がありますが、代表的なものは、創業補助金でしょう。
最大200万円の補助金がもらえます。
独創性のあるビジネスを立ち上げるかたが対象となっています。
東京事務局に問い合わせれば、公募時期や条件について親切に詳しく教えてくれます。
助成金、補助金は、返す義務がないのでとてもお得です。
そのため、多くの創業者がまずは、関心を持たれます。
ただ、入金が後払いであり、創業した時点での資金繰りに役立たないことと、金額も決して大きくはないというデメリットがあります。
また、必ずしも受給できるとは限りません。
とくに人気の創業補助金は、採択率が低下傾向にあり、狭き門となりつつあります。
事業によほどの新規性、社会貢献性がないと採択されなくなっています。

ご相談者さまの場合には、運転資金は少なくとも経費の3カ月分の600万円は確保しておきたいところです。
さらに、設備投資に400万円、販促資金に200万円が必要です。
となると、必要総資金として、1,200万円は、準備しておくべきでしょう。
自己資金が400万円ですから、追加で調達すべき資金は、800万円です。
現在の助成金や補助金では、これだけの資金を創業直後に確保することはできません。
資金調達の面では、助成金や補助金は、補助手段と考えて、まずは、融資で必要資金を確保するべきでしょう。
創業者向け融資には、日本政策金融公庫の創業融資と保証協会を活用した制度融資があります。
ともに公的な融資制度です。
どちらの制度でも、お客さまの場合には、うまくいけば必要資金を全額、確保することができます。

ただ、創業融資にも融資審査があり、無条件に貸してくれるわけではありません。
創業融資の成功率は、約50%ぐらいですので、準備を怠らないでください。
創業融資を受けるためには、クリアしなければならない主な要件は、

  • 事業経験の豊富さ
  • 創業計画書の信頼性
  • 自己資金の大きさと健全性
  • 信用情報

の三つです。

事業経験は、重要な審査ポイントとなります。
おざなりに書かないで詳細に記述してください。
営業実績や技術の高さをアピールするのがコツですが、それらをアピールしようがない場合は、経営全般のスキルをアピールするのも手です。

二つ目に挙げた創業計画書とは、創業者が作る事業計画書のことです。
事業計画は、いわば、ビジネスの青写真です。
創業時の融資は、事業の実績がないので、この青写真が審査の根拠となります。
ですので、しっかりとした計画書を買いて、きちっと説明できるようにしておく必要があります。
創業計画書の作成ポイントは:

  • 創業の動機
  • 事業経験の強味のアピール:上述したポイントを記述してください。
  • ねらっている市場セグメントと差別化要因:事業経験の強味が差別化要因につながっている必要があります。
  • 顧客リスト:潜在顧客リストがあれば有利となります。不特定多数の顧客を扱う場合は、勤務時代の営業実績を示す資料で代替する手もあります。
  • 事業内容の説明:ITなどわかりづらいビジネスの場合は、説明図を添付してください。
  • 損益計画:売上や主要経費の根拠づけを明確にする必要があります。
  • 資金繰り計画:資金使途と返済財源を60カ月の資金繰り計画で明快に説明します。

自己資金については出所をちゃんと説明できるようしておいてください。
個人の通帳を過去にさかのぼって見られてしまいますので、給料からこつこつ貯めていった資金なら問題ありませんが、そうでなければ入金の経緯をきちっと説明できるようにしておく必要があります。
たとえば、親からの贈与であれば、贈与契約書を締結して、親の財務状況を説明できるようにしておく必要があります。

信用情報とは、破産などの債務整理、過去の債務の返済遅延、キャッシング・クレジットカードローン・消費者金融などの高金利ローンの有無です。

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