福祉タクシー事業を始めたい。必要な創業資金を借りられますか?

この記事を書いた人
工藤聡生

公認会計士・税理士
元銀行員、20年にわたり、創業融資、銀行融資、VCからの資金調達を支援てきました。資金調達の累計額は、100億円以上です。

介護タクシーを開業予定です。
さまざまな職を経験してきましたが、運送業や介護での経験があるので、介護タクシーならそれを生かせるからです。
また、近隣地区に需要がありそうなのでぜひ挑戦したいと思っています。
ただ、自己資金は50万円しかありません。
友人は、経験が十分にあるし、介護関連の知り合いも多いので、そこをアピールすれば、日本政策金融公庫は、300万円ぐらいは貸してくれるだろうと言ってくれています。
本当でしょうか?

福祉タクシー事業で主な支出は、車両購入費、機械器具購入費、当初の人件費、広告のためのチラシ代などです。
幅広いお客様のニーズに対応するためには、大きめの車両を買ったほうがよいでしょう。
ですので、創業のための総資金は、多めに400~500万円と見込んだほうがよいと思います。
日本政策金融公庫や制度融資の創業融資は、自己資金の2.5~3倍が目安です。
必要資金の少なくとも4分の1は、自己資金でまかなう必要があります。
かりに400万円が必要とすれば、少なくとも4分の1の100万円が自己資金として必要です。
残りの300万円を創業融資で調達することになります。
確かに自己資金の倍という条件は実質要件なので、必ずしも明確な規定があるわけではありません。
自己資金の4倍以上の借入に成功される創業者のかたも確かにいます。
しかし、それは多くはありません。
このまま申し込むと自己資金不足で謝絶される可能性は否定できません。
また、福祉タクシーは決して儲かるビジネスではありません。
車両の燃料代、メンテナンスコスト、ちらし代を引くと、わずかな利益しか残りません。
そこからさらに、税金を払い、借金を返済し、残りが生活原資となります。
生活を維持するだけの売上を確保するのは大変です。
スタッフを雇用した場合は、生活を成り立たせるためには、相当期間を要するでしょう。
借入額が大きくなると返済額も大きくなります。
返済額が大きいと、生活が圧迫されます。
たとえ貸しくれるとしても、自己資金の倍額を大きく上回る借入をするべきではありません。
車両購入は、リースを使う手もあります。
ただ、リースにしたからといって長期的には資金負担が減るわけではありません。
利幅の低いこの事業を継続させるためには、自己資金割合を増やした方がよいことに変わりはありません。

福祉タクシーは、国土交通省から認可を受けなければなりません。
介護タクシー認可を受けるためには、所要資金の50%以上で、かつ事業開始当初資金の100%以上の自己資金が求められていますので、車両はリースを利用しても200万円~300万円の自己資金が必要です。
自己資金をもっと貯めるしかありません。

その間に知人のネットワークを利用して、福祉タクシー事業を開業予定であることを告知して、営業活動をすることもできます。
保守的に資金繰り計画を作成して、冷静に事業開始時期を再考されてください。

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