創業融資の面談で絶対に守るべきこと

この記事を書いた人
工藤聡生

公認会計士・税理士
元銀行員、20年にわたり、創業融資、銀行融資、VCからの資金調達を支援てきました。資金調達の累計額は、100億円以上です。

面談で守るべきこと

創業融資を受けるためには、審査担当者との面談に成功しなければなりません。
次の心構えを守っていただければ、面談で失敗することはないはずです。

  • 常識をわきまえる 外見に注意してください。ラフな格好ではなく、スーツを着用してください。言葉遣いも社会人としての礼節を忘れないようにしてください。
  • 創業計画書に忠実に答える 創業計画書の内容と矛盾する答えは言わないでください。面談者は創業計画書をもとに質問をしてくるので創業計画書と違うことを言うと信頼を失います。
  • 弱気になりすぎない 自分から減点されるようなことは決して言わないでください。相手に飲まれると「どうせばれるのだからこちらから言って許してもらおう」と思ってしまいます。創業計画書に必要な情報は書いてあるのですから、自分からマイナスなことは言わないでください。
  • かといって強気になり過ぎない 絶対に口論はしないでください。面談者によっては、意地の悪い質問や的外れな質問をしてきますが、決して、感情的にならずに、ベストな答えを淡々と返してください。
  • 無駄口を叩かない 聞かれたことだけに要領よく答えてください。脱線したり、余計なことを言ったりしないように注意してください。質問されることを的確に答えたほうが心証はよくなります。
  • 熱意を伝えてください 面談者も人の子です。熱い思いを伝えれば、否決しづらくなります。創業への思いは、情熱的に語ってください。社会貢献したい気持ちとか使命感を謙虚に熱く語れば、審査担当者はあなたのことを少なくとも嫌いにはなりません。善人を嫌うひとはいないからです。好感を持たせることに成功すれば、否決される確率は必ず下がります。

面談は、どれぐらいかかるのか

だいたい30分1時間ぐらいと思ってください。
創業計画書と添付資料がしっかりしているほど、面談時間は短くなります。

面談はなんのために行われるのか

担当者は、貸したがっています。
意外ですが、貸せばかすほど、担当者の評価はあがるからです。
ただ、やみくもに貸せばよいわけではなく、上長の承認が必要です。
上長からの厳しいつっこみを予想して、しっかりと会社の事業プランを検討しておかなければならないのです。
厳しい質問をされたときは、内部審査をとおすためにいろいろと考えてくれているのだと思ってください。

担当者だけでなく日本政策金融公庫自体も貸したがっています。
開業率をアップさせるのは、国の基本政策です。
そのため、日本政策金融公庫は、国から創業融資をもっと貸し出せと言われています。
自己資金がなくても貸せと言われることもあります。
ですので、日本政策金融公庫自体も、貸したいのです。
『貸したくないからいじのわるい質問をするのではないか』と勘繰らないでください。
いじの悪い質問をされたら乗り越えるべきハードルの1つに過ぎないとポジティブにとらえてください。

添付資料は、強力な味方です。

ほとんどのかたは、金融機関の融資審査は初めてです。
なにを聞かれるか不安だと思います。
しかし、添付資料を作成しておくと、自信をもって面談に望めます。
なぜなら、添付資料は、すべてアピールをするための強力な武器だからです。

不安は、面談が始まる直前にピークに達します。
面談に望まれたかたは、全員、手もとにある添付資料をみて、作っておいてよかったと安堵を感じます。
資金繰り計画、損益計画、市場調査、潜在顧客リスト、ビジネスフロー、販売手法の説明、顧客からの発注書などの添付資料は、それ自体が、創業者に代わって雄弁に語ってくれるからです。

絶対に言ってはならないセリフ

創業融資に限らず、資金調達のコツは、資金使途を明示して返済財源を明らかにすることです。
軌道にのるまでの2ヶ月分の経費に300万円かかるとか、設備投資に200万円必要であるとか、使途を明確にしてください。
ですから、『いくらなら借りられますか?』とは絶対に聞かないこと。
いくらなら借りられますかという質問は、使途は明確でないが手元にたくさんお金を置いておきたいという発想です。
使途が不明確だと、リターンも予測できません。
だから、返済計画もたてようがありません。
『とにかくお金が欲しい、しかし、資金使途と返済財源は不明だ』というのは、金融機関が一番いやがる相手なのです。

アピールするこつ

こつこつと開業のために準備してきたということを伝えるのが一番です。
思いつきで開業したと思われると謝絶のリスクが高まります。
準備作業のなかでも、こつこつと自己資金をためてきたプロセスは、好印象を与えることができます。
わずかな金額でも毎月こつこつとためてきたことをアピールしてください。

独立のために勤務時代に実直に実務を学んできたことを伝えるのもポイントです。
早い段階から独立の意識をもって技術を身につけてきたというストーリーはだれでも作れるはずです。
ですので、独立のための学びのストーリーは、かならず準備し、創業の動機の部分にも簡単でよいので記述しておいてください。

当方経由の面談の場合

当方で支援した場合は、創業計画書や資金繰り表がしっかりできていることは、日本政策金融公庫の担当者に理解してもらっています。
『工藤公認会計士税理士事務所さんから紹介された申込者はみな計画がしっかりしている』と誉め言葉を度々いただいております。
一方、お客さまには、事前に面談で聞かれることはレクチャーしております。
ですので、不意を突かれるような質問や戸惑うような質問はほとんどありません。

面談で聞かれること

面談で聞かれる主な質問をまとめました。
面談のシミュレーションは、必ず、事前に実施してください。

質問項目質問意図と対応策
創業理由人柄や創業の意思の強さを確認しようとします。少なくとも、まじめな人間だと思わせるように努力してください。
事業経験の詳細と創業者の強み強い企業を創業できるだけの事業経験をもっているのかを確認しようとします。事業経験の強みが企業の強みに直結することをアピールしてください。
製品、サービスの具体的な内容やビジネスフロー審査担当者は、理解できない事業には高い評価は与えないので、事業を理解させる努力が必要です。視覚的な資料を用意してください。特にIT系は、積極的な説明努力が大切です。
事業の差別化要因の具体的な内容ターゲット市場を攻める際に、競合に対してどんな強味をもっているのかを尋ねてきます。
潜在顧客リスト顧客リストの信頼性を確認しようとして、つっこんだ質問をしてくることがあります。顧客の実在性が問題となっているのです。不特定多数を顧客とする事業の場合には、通常は、顧客リストがないので、営業実績をアピールしてください。
開業予定場所事業を行う場所は特定できる必要があります。
自己資金の貯め方自己資金が本当に返済不要な資金であることを、通帳を精査して確認します。
クレジットカードローン残高事業のみならず、個人の生活を含めた資金繰りの健全性について懸念をもっています。個人も含めた資金繰り全体をすらすらと答えられるようにしておきましょう。企業の資金繰り計画をきちっと説明できて、もらえる役員報酬の範囲内でカードローンの返済計画が立てられるなら、大きな減点にはなりません。
通帳の入出金内容税金や公共料金の未納、家賃の滞納、資金管理能力等について関心をもっています。払うべきものを払わずに遊興費に使ってしまう人と思わせないようにしてください。
売上や経費の計上根拠

現実的で実行可能な収支計画を立てているのかを確認しようとします。とくに売上計画は、価格×数量で説明するだけでなく、企業の個別要素を織り込んで予測してください。計画的な経営ができる起業家であることをアピールしてください。

資金繰りの計画

資金使途と返済財源について聞いてきます。審査担当者の最大の関心事です。金融機関は、資金繰りに関心のない経営者が嫌いです。資金繰り計画をすらすらと答えられるようにしておいてください。

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