公認会計士・税理士
元銀行員、20年にわたり、創業融資、銀行融資、VCからの資金調達を支援てきました。資金調達の累計額は、100億円以上です。
日本政策金融公庫の創業融資の手続の流れと必要書類
日本政策金融公庫の各種の創業融資制度の融資実行手順
全体のスケジュール
通常は、申し込みから1ヶ月ぐらいで融資が実行されます。
ちょっとこじれた場合には、1.5ヶ月ぐらいを要します。
事前相談
まずは、事前に相談に乗ってもらって創業融資制度がどんなものか理解しましょう。
事前相談には、次の三つの方法があります。
- 電話相談
- 支店での相談
- ビジネスサポートプラザ
①の電話相談は、いつでも電話可能です。0120-154-505(イコウヨコウコ)に電話して、音声ガイダンスに従って0を押せば、創業融資に関する質問に答えてくれます。最寄りの支店をどこにしたらよいか、悩んだ場合は、このフリーダイヤルで確認してください。
②の支店での相談は、支店で対面で相談する方法とビデオ会議の方法とがあります。対面の場合は、前日の午後2時までに予約し、オンライン会議の場合は、前々日午後4時までに予約します。
次の日本政策金融公庫の『予約相談』から申込できます。
支店は、最寄りの支店を選ぶことになりますが、どの支店にするかについては、それほど神経質になる必要はありません。各支店のカバーエリアは、広いので1時間以内に行ける支店ならどこでも受け付けてくれます。
面接に備えて、日本政策金融公庫の雰囲気を把握するためには、できれば対面の事前相談を受けることをお勧めします。
③は、東京の場合ですと新宿支店にあります。中小企業診断士などの資格を持つ相談員が創業融資の相談に乗ってくれます。
事前相談は、②の支店での相談がおすすめです。雰囲気をつかむためにも、実際に担当をしてくれる支店で相談を受けられたほうがよいでしょう。
わからないこととか、不安なことを聞いておくためにも、一度は、相談を受けてください。
創業計画書等の必要書類について説明を受け、提出しなければならない書類を確認しましょう。
なお、創業融資で専門家を使われる際には、事前相談は2度手間となるので不要です。次の借入申込手続きとともに、専門家がサポートしてくれます。
借入の申込(必要書類の提出)
必要書類を提出します。
支店は、開業場所に近い支店を選ぶことになります。
必要書類の提出は、郵送もできますが、オンラインがおすすめです。
365日24時間いつでも申し込みできますので便利です。
必要書類もアップロードできます。
書類が不足している場合は、連絡が来ますので迅速にご対応ください。
専門家を経由した場合は、通常は専門家が必要書類を提出してくれます。支店も専門家が最適な支店を選ぶので、必ずしも最寄りの支店とは限りません。
主な提出書類は、以下の通りです。
- 借入申込書 業種、創業年月、借入希望額、借入希望日、希望の返済期間、資金使途、申込人の氏名、住所、連絡先、年齢、職業、同居家族、返済金を支払う銀行口座情報などを記入します。裏面にも同意事項があるので印刷して提出してください。押印は不要です。借入申込書は、事前相談の段階でも提出可能です。インターネット申込の場合は直接入力するので、借入申込書は不要となります。
借入申込書、創業計画書、企業概要書のフォームは日本政策金融公庫のホームページからダウンロードできます。 - 創業計画書 開業前、または間もない時に借入申込する場合に作成します。事業の内容を説明する資料です。
記入する際には、公庫が紹介している『日本政策金融公庫の記入例』をご参照ください。
創業計画書の書き方については、「創業計画書の書き方は?創業融資成功のコツを詳細に説明!」をご参照ください。 - 企業概要書 同じく、事業の内容を説明する資料ですが、創業2年目以降に借入申込する場合に作成します。記入の仕方は、上記の『創業計画書の書き方』が参考となりますが、すでに最初の決算は、終えているので、この書類よりも、決算書の説明の仕方の方が重要となります。
- 知事の推薦書 飲食や美容などの『生活衛生関係営業』の場合で申込金額が500万円を超える場合には、知事の推薦書が必要です。
推薦書といっても、東京であれば日本政策金融公庫の窓口で必要書類や場所を教えてくれますし、書類が整っていれば、即日に推薦書を交付してくれます。 - 住民票の写し 原本。世帯全員の記載が必要。マイナンバー、本籍地の記載のないもの。
- 運転免許証コピーまたはパスポート写し コピーの場合は、本籍地の記載を黒く塗りつぶしてください。また、運転免許証の住所・氏名等に変更がある場合は、裏面もコピーしてください。
- 通帳 面談で最近6カ月以上の通帳の原本の提示が求められます。直近の取引までみられますので、記帳を済ませておいてください。使っているすべての通帳を持参しましょう。住宅ローン(又は家賃)と公共料金の支払いの二つが確認できるものである必要があります。コピー提出の場合は、金融機関名がわかる部分もコピーすること。公共料金(電気、ガス、水道、電話など)は2種類以上確認できること。公共料金が、コンビニ払いやクレジットカード払いで通帳明細に出てこない場合は、別途、領収書やカード利用明細を用意する必要があります。面談では原本重視のため、ネットバンキングの場合だと面談の場でログインを求められることがあります。
- 履歴事項全部証明書(法人の場合のみ) 3ヶ月以内に取得したもの。『かんたん証明書請求』を使えば、100円割引された料金で郵送してくれるので、わざわざ窓口に行く手間が省けます。
- 納税が確認できるもの 給与所得の源泉徴収票か、確定申告書の控えのどちらか。過去2年分必要です。ともに依頼すれば、勤務先も税務署も再発行してくれます。勤務先に依頼しづらい場合は、市区町村の役所で課税証明書(全項目証明書)を入手してください。確定申告書を紛失した場合には、『創業融資のための確定申告書の再発行』をご参照ください。
- 許認可証の写し 許認可が必要な場合。飲食店など、店舗がないと営業許可がおりない場合は、申込後の提出でもよいとされますが、あらかじめ公庫の担当者に伝えておいてください。
- 見積書 設備投資がある場合。カタログやインターネットの資料でも大丈夫です。設備投資の方が借入限度額が大きいので、30万円未満でも経費処理せずに、10万円以上の設備投資は、すべて用意しましょう。後日、実際の支払状況をチェックされるので、水増しをしてもばれてしまいますし、ペナルティもあるので、必要金額を正直に見積もってください。
- 不動産の賃貸借契約書 事務所や工場の賃貸借契約書です。契約前であれば、物件の概要がわかる書類でもOKです。自宅で開業する場合も必要です。所有物件で開業する場合は、直近の固定資産税の領収書が必要となります。
- 返済予定表 住宅ローン、自動車ローン、教育ローンがある場合。紛失した場合は、余裕をもって再発行しておいてください。
- 資金繰り表 任意の添付書類ですが、提出した方が有利です。
面談
2~3日で、日本政策金融公庫より面談日の通知があります。
面談日は、申し込み後3日~1週間後です。
面談は、30分から1時間で終わります。
面談は、創業計画書に書かれた事業計画の中身のチェックが中心に行われます。
また、担当者もやはり人ですから、服装や言葉遣い等によっても、判断は影響されます。
社会人としての最低限のマナーや言葉遣いにも注意してください。
質問に対して的確に答えられるようにしておいてください。
資金計画の説明は、意外と大切です。
すらすらと説明できれば、印象は確実によくなります。
資金繰りの視点から経営を説明する訓練は、実際に経営を始められてからも大いに役立ちます。
面談のあとに、事務所や店舗の実地調査がほとんどの場合、実施されます。
また、追加資料の提出が求められることもあります。
面談への対応については、「創業融資の面談で絶対に守るべきこと」をご参照ください。
結果の通知
結果は、面談後1週間~2週間後に電話で連絡がきます。
ただし、日本政策金融公庫自体は、平均所要期間は約2週間程度としています。これは、担保・保証人を設定している場合や、現地調査を予定する場合、書類に不備がある場合を想定しているからです。
ダメな場合でも、通知されます。
通知の早い遅いは、結果とは無関係なので通知が遅くとも悲観しないでください。
申し込んだ金額が満額借りることができなくとも、減額した金額で融資される場合も結構あります。
なお、専門家経由の場合は、専門家から連絡が来ます。
通常の場合よりもちょっと早めに結果を知ることができます。
融資実行
融資が承認された場合は、あとは指示に従って手続きするだけです。
契約書、借用証書などの書類の到着が連絡後5日~10日後、融資資金は書類提出後、1週間~2週間後に申込者が指定した口座に振り込まれます。
おおかたは、書類が公庫に実際に到着してから3日以内に着金します。
契約に必要な提出書類は、次の通りです。なお、創業融資は、基本的に無保証を狙っていくものなので、連帯保証人に関する記述は省略しています。
- 借用証書 借主が署名します。実印で押印します。なので印鑑証明書が必要となります。
- 印紙 融資額に応じて印紙額も変わります。借用証書に貼り付け、実印で割印します。融資額100万円超から500万円以下は2,000円、500万円超から1,000万円以下は1万円、1,000万円超から5,000万円以下は2万円です。
- 印鑑証明書 印鑑証明書は、個人事業主のもの、法人の場合は、法人及び法人代表のものが必要となり、融資日から3ヶ月以内に発行されたものである必要があります。
- 着金する口座の通帳コピー 通帳コピーは、口座情報がわかればよいので表紙と見開き1ページをコピーします。
- 預金口座振替利用届 返済を口座振替で行うための手続きです。返済用口座の届出印の押印の他に、金融機関の確認印をもらいます。一つは、日本政策金融機関用、もう一枚が金融機関用です。
- お客さまの情報の利用に関する同意書 個人情報保護法の要請による同意書です。
- 団信の申込書 借主が死亡または障害を負った場合に備えた生命保険です。団信については、『日本政策金融公庫の融資で団信は加入するべきか』をご参照ください。
- その他 日本政策金融公庫がまれに別の書類を指示してくる場合があります。
無担保、無保証の場合には、担保や保証人を設定する手間がないので、スムーズに融資が実行されます。
以上、融資申し込みから実行までの期間は、約1ヶ月です。
ちなみに専門家経由ですと、全体の日程が1週間ほど短縮可能です。
自治体の制度融資の融資実行手順
制度融資の場合の流れは以下の通りです。
金融機関の決定
お近くの信用金庫の支店をお選びください。
大きな銀行より小さな銀行の方が協力的だからです。
創業融資は手間がかかるので、優良顧客の多い都市銀行などは、実態的には取り扱っていません。
金融機関の担当者との相談
制度融資を利用することについて了解をとり、その後の制度融資の手続を案内してもらいます。
制度融資申込
提出書類を金融機関を経由して、又は直接に保証協会へ申し込みます。
提出書類は、保証申込書、履歴事項全部証明書、創業計画書、見積書(設備投資がある場合)、資金繰り表、許認可証(許認可が必要な場合)、法人設立届の控、法人印鑑証明書、代表者の個人印鑑証明書です。
通常は、金融機関経由です。
また、融資相談が義務付けられている制度融資を選んだ場合は、1ヵ月以上にわたって事前に自治体で経営相談員の融資相談を受けなければなりません。
起業時期そのものが遅れ、資金繰り計画が狂うことがあるので注意してください。
審査・面談
保証協会の担当が会社に出向いて面談します。
保証協会の審査を通ればほぼ大丈夫です。
ただ、金融機関でも独自に審査を行い、それにより落とされることもあります。
融資実行
決裁後、1~2週間後に実行されます。
申込みから実行までは、経営相談員への融資相談が必要なら、2~3ヶ月が必要です。
不要ならば、1~2ヶ月です。
specific