創業融資で自己資金の10倍以上を借りられますか?

創業融資で自己資金の10倍以上を借りられますか?
この記事を書いた人
工藤聡生

公認会計士・税理士
元銀行員、20年にわたり、創業融資、銀行融資、VCからの資金調達を支援てきました。資金調達の累計額は、100億円以上です。

自己資金の10倍の融資を受けた事例は、いくつもあります。
ただ、統計的には、創業融資額は、自己資金額の2.5倍~3倍です。
10倍というのは、とても大きな金額だということはまずご理解ください。

歴史的に考えると日本政策金融公庫は、自己資金を重視してきました。
日本政策金融公庫は、昔は、自己資金の2倍を融資額の目安としてきました。
その後、現在は廃止された『新創業融資制度』で創業資金総額の10分の1以上の自己資金を必要とするという要件が公表されました。実際の審査では、それ以上の自己資金が求められてきましたが、形式的にせよ10分の1という基準が公表されてから、自己資金の要件に緩和化の傾向があることは確かです。
そもそもの政府の政策目的は開業率を上げることであり、開業してうまくいくなら、自己資金の9倍でも融資を行うべきだという趣旨だったのです。
実際に自己資金の多い起業家が必ずしも、自己資金の少ない起業家に比べて業績が良いとは限らなかったことも背景にあります。
自己資金の10倍というケースは、当会計事務所の『お客様の声』で紹介しているように、実際にありますし、中には、自己資金0で調達に成功した方もいます。

しかし一方では、日本政策金融公庫が、自己資金は、これまで開業準備をしてきたやる気の現れであり、自己資金が大きいほど、返済能力があるとみる傾向があることは確かです。
10倍の高額融資は、実際に存在していますが、割合的には、とても少数です。

しかし、この成功した方々には、たまたまというよりは、二つの共通の特徴があります。
まず、第一に事業経験がしっかりとしています。
事業経験で培った強みが、明確です。
なおかつ、その強みを資料で提示しています。
強みをどうやって資料化するのかということですが、難しい話ではありません。
潜在顧客リスト、発注書、雑誌・新聞の切りぬき、社内コンテストで表彰されたときの資料、ホームページのアクセス数やSNSのフォロワーのわかる資料などを面談に持ち込んで経営者の強みを示すのです。
簡単な例を挙げれば、『私には、これこれの強みがあります。その証拠として潜在顧客リストがここにあります』と言って面談で担当者に見せるのです。

第二に、市場分析をしっかりとやっていることです。
たとえば、市ヶ谷で居酒屋を開くとしましょう。
市場のライバルをしっかりと分析して、そのライバルと戦うという前提で売上予測をしているのです。
商圏には、潜在顧客が〇〇人おり、ライバルの居酒屋は、1キロ以内に5軒あり、潜在的ライバルの蕎麦屋や3軒あり、それぞれの平均顧客単価は、〇〇円と××円であり、特徴は、○○と××だが、当社は、それよりも安い◇◇円の平均顧客単価で、◇◇の特徴を持っているので、市場の◇◇%は、確保できる。従って月間売上は、平均単価×客数=◇◇円となる』といった感じです。
市場のライバルの特徴を分析して、その上で、自社の特徴的な強みを前提にして、売上予測をするので公庫の担当者にとってとても説得力があるのです。
この手法は、飲食店以外のあらゆる業界に応用可能です。
ここまで分析する人はあまりいないので、日本政策金融公庫の担当者の受けはとてもよくなります。
また、実際に開業してもここまで分析する習慣がついている人は、ほとんどの場合、事業を見事に成功させています。
実際に、自己資金が大きいからといってうまくいくわけではありません。
自己資金は潤沢でも、創業した企業がうまくいかないケースは多々あります。
しかし、こういった緻密な市場のライバル分析ができる人は、はるかに事業をうまくゆかせる割合が高いのです。
公庫の担当者は、そのことを知っています。
緻密に準備する人は強いのです。

なお、信用情報に傷がないのがまずは、前提条件です。破産などの債務整理はもちろん、借入金の返済遅延やカードローンなどの高金利ローンがないことです。

これらの条件をクリアした場合には、10倍以上の高額融資に成功する可能性はぐっと上がります。
上述の事業経験と市場分析の条件を完璧にクリアできなくとも、部分的にクリアするだけで、融資の成功確率が極めて高くなることは確かです。

なお、実際に事例については、当会計事務所ホームページの『お客様の声』をご参照ください。

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