創業融資の借入で自己資金が少ないので親からお金を出してもらいました。大丈夫でしょうか?

この記事を書いた人
工藤聡生

公認会計士・税理士
元銀行員、20年にわたり、創業融資、銀行融資、VCからの資金調達を支援てきました。資金調達の累計額は、100億円以上です。

日本政策金融公庫の新創業融資制度について質問です。
新規開業にあたり、自己資金が200万円しかなかったので両親から300万円出してもらいました。
それでも足りないので日本政策金融公庫の新創業融資制度を利用して、1000万円を借りたいと思っています。
でも、ネットでは、自己資金は、3分の1は必要だという記事をよく目にします。
わたしの場合、融資は受けられるのでしょうか?
担保は、ありません。
借入、クレジットカードローン等は一切ありません。
同じ業種で10年以上、勤務してきた経験があります。

ちょっと懸念される点があります。
融資審査は、銀行側に自由裁量権がありますので、大丈夫と思わせることができなければ形式要件を満たしていても融資は否決されてしまうことがあります。

懸念点についてご説明いたします。
実際の審査では、好ましくは、自己資金は創業資金総額の4分の1はあることが望ましいとされています。
公表はされていませんが、これが実質的な審査の目安となっております。
ご質問者様の場合には、総額が1,500万円なので375万円です。
最悪でも、350万円ぐらいは欲しいところです。
問題は、ご両親からの資金提供です。
ご両親からの資金が、借入なのか贈与なのかをはっきりさせる必要があります。
親とは言え、将来返済しなければならないということであれば、自己資金とはみなされず借入となります。
となると、自己資金比率は、15分の2となり、とても低くなってしまいます。
これでは謝絶される確率が高くなります。
なので、贈与契約書を作り、親から資金を贈与してもらう必要があります。
贈与を受けた場合は、自己資金比率は、3分の1となり申し分はありません。

ただ、ご両親の財務状況が良好でないと、贈与契約が締結されたとしてもそれは形式だけであり、実際には将来返済しなければならないのではないかと勘繰られます。
となると、やはり心証はよくありません。
審査担当者からするとちょっとひっかかるところが残ってしまうということになります。
この理由から、親からの贈与の割合が高い場合には、謝絶されてしまうことが少なくありません。
ですので、親の財務状況を積極的に説明して、返済不要どころか、さらなる追加援助もありえるぐらいの力強い説明が欲しいところです。
親の潤沢な資産や収入を示す資料を出せば、審査担当者の疑念は払拭できます。

なお、親からの入金は、親の口座から直接にご質問者さまの口座へ振り込んでください。現金を経由すると通帳に振込人が印字されないため、見せ金と疑われてしまうからです。


しかし、親の財務状況が芳しくない場合には、他の部分でリカバリーを図る必要があります。
具体的には、

  • 事業経験を売り込む。
  • 資金繰り計画を作り込み、資金収支に問題ないことを理解してもらう

といった努力が必要です。

事業経験については、勤務経験と、これから創業する事業の強みを関連づけるようにしてください。
自分の強みが、会社の強さを必然的に生み出すという筋書きを作るのです。
その意味では、営業経験をアピールすることはとても効果的です。
営業実績、社内表彰、マスコミ記事、勤務時代のお客で創業後も付き合ってもらえそうな潜在顧客のリストなどが添付可能であれば、必ず添付してください。

また、資金繰り計画を詰めて、資金使途と金額を明確にして、返済計画も実現可能性の高いものをつくるのは、創業融資に限らず、融資対策においては常に有効です。
金融機関は、『できるだけ借りたい』とか『返せると思う』といった曖昧な姿勢を嫌います。

ご質問者さまの場合には、自己資金が弱いので、ほかの部分でリカバリーをはかり、全体として合格点に持ち込むように努力されるべきです。
事業経験が長いので、上記の点をしつこいぐらいにアピールしておけば、全体としては合格点がとれると思います。

general

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