日本政策金融公庫の創業融資に落ちました。再挑戦は、半年待たないといけませんか?

この記事を書いた人
工藤聡生

公認会計士・税理士
元銀行員、20年にわたり、創業融資、銀行融資、VCからの資金調達を支援てきました。資金調達の累計額は、100億円以上です。

よくネット上では、日本政策金融公庫の創業融資に断られたら、半年待たないと再挑戦できないというコメントがあります。
創業融資の再挑戦のためには、半年待たなければ再挑戦できないというのは、都市伝説です。
原因を解消できれば、半年待たなくとも再挑戦に成功しますし、原因を解消できなければ、数年待っても貸してもらえません。
そもそも、日本政策金融公庫の創業融資に断られた理由を把握する必要があります。
断られる主な理由は、次の5つです。

  • 犯罪歴がある。あるいは、反社が関連していると見られた。
  • 事業経験不足
  • 創業計画書の記述があいまいだった。
  • 自己資金が不足していた。
  • 信用情報に傷があった。

以下では、断られた理由毎に今後の対策をご説明します。
一つ一つ、対策を見ていきましょう。

犯罪歴があったり、反社とみなされて断られた場合

犯罪歴があったり、反社が絡んだりしている場合は、ほぼ謝絶されます。
犯罪歴、反社の場合は、半年たっても同じ結果となります。

事業経験が不足して断られた場合の対策

2番目の事業経験は、一般的には、事業経験が1年未満だと、審査は厳しくなります。
事業経験が1年未満の場合は、アルバイトをしてさらに勉強中とか、ほそぼそとではあるが、部分的に営業を開始して勉強しているとか、努力を示せればよいのですが、この勉強中という努力も見せていない場合は、謝絶される可能性は高くなります。
次の項目も関連しますが、創業計画書を融資申込書レベルと考えしまい、事業経験をアピールしようという意識が欠けているのです。
創業融資は、5割は断られる融資制度なので、慎重な態度が求められます。
事業経験不足で断られた場合の対策としては、少なくとも半年から1年、事業経験を積んでください。

創業計画書があいまいで断られた場合の対策

3番目としては、創業計画書があいまいで、経験値やターゲット・販売戦術・セールスポイントが伝わらずに断られるケースも少なくありません。
事業内容が、ITなどのように複雑で理解してもらえずに、謝絶されるケースも少なくありません。
収支計画や資金繰り計画に根拠がない場合も、よく謝絶されます。
裁量権は、融資担当者にありますので、事業内容が伝わらなければ、お金は貸してもらえません。
担当者に『お金を貸しても大丈夫だ。返済してくれる。』と思わせなければ、断られるのです。
この点について、厳しい認識をもってください。
公的融資だからといって、日本政策金融公庫に融資する義務はありません。
むしろ、『貸しても大丈夫だ』ということを立証する責任は、こちら側なのです。
逆にいうと2番目のケースの方は、この認識さえもっていただき、しっかりと創業計画書を作り直せば、すぐに再挑戦しても創業融資を受けられます。

自己資金不足で断られた場合の対策

4番目の自己資金とは、ちょっとずつ貯めた自分のお金です。
日本政策金融公庫の面談では、当日に通帳の原本やネットバンキングの印刷された明細を検証します。
期間は、過去6ヵ月間以上です。
そこで、預金の推移は一目瞭然ですので、ちょっとずつ貯めてきたかどうかは、すぐにわかってしまいます。
統計的には、自己資金の2.5倍~3倍が借入額となります。
100万円が自己資金なら、250万円~300万円が平均借入額です。
ただ、この辺の感覚は、日本政策金融公庫内の裁量基準が、統一・明確化されているとは言いづらいので、担当者によって違いますし、アピールの仕方によってもかなり違います。
わたくしどもは、他の論者と違って、自己資金は最大の決め手とは思っておりません。
自己資金は、融資額の単なる制約条件にすぎず、創業計画書の内容によっては、融資額は10倍でもあり得ます。
ただ、2.5倍~10倍と幅はあるももの、自己資金が融資額を制約することは確かです。ですので、親からの贈与や第三者の出資等により、強化できるのであれば、半年待たなくともすぐに融資を受けられる可能性があります。

税金や社会保険料が未納で断られた場合の対策

なお、通帳を精査していると、社会保険料や税金の滞納が見つかってしまう場合があります。
日本政策金融公庫は、この二つについては、とても厳しいです。
日本政策金融公庫の財源は、政府が保証している財政投融資が財源なので、税金の未納や準税金である社会保険料の滞納があれば、絶対に貸してくれませんので、完済してから創業融資に申し込みましょう。
公共料金や家賃の滞納についても厳しくみられますので、完納しておいてください。生活の基本コストである公共料金や家賃が遅延していると、基本的な支払い能力やモラルが疑われるからです。いわゆる期日観念です。
結論的には、税金、社会保険料、公共料金、家賃については、完納してから、再度、創業融資に申し込みましょう。ただ、完納による自己資金減少に合わせて、『必要な資金と調達方法』と資金繰り計画を修正する必要があります。

信用情報に傷があって断られた場合の対策

5番目は、過去に借入金の遅延があったり、クレジットカードローン、キャッシング、消費者金融などの高金利ローンが事業の足を引っ張る程度の残高であったりする場合です。
破産などの債務整理があった場合は、なおさら、だめです。
不安のある方は、CICで確認しておいてください。
高金利のローンが大きすぎる場合は、完済できれば問題はすぐに解決します。
滞納も、半年ぐらい期限どおりに返済するようにすれば、最近は滞納をしていないということで、評価は改善します。
破産や個人再生などの債務整理の場合は、事故情報が個人信用情報機関から7年間は抹消されないので、少なくともその間は、借りれません。
このように信用情報については、資金力を強化することによりすぐに解決する場合と、数年かかってしまう場合とに分かれます。

日本政策金融公庫の担当者に必ず原因を訊いてください

結論としては、日本政策金融公庫の創業融資に断られても、半年、待つ必要はありません。
理由が改善されれば、すぐに申し込んでも貸してもらえます。
逆に、理由が改善されなければ、何年待っても、また断られます。
ですので、謝絶された理由を特定することが大切です。
担当者から謝絶の連絡があった時は、落ちたときはショックで、『そうですか…』としか答えられない人が多いのですが、そこで、粘って、理由を聞くことが大切です。
その場では、聞けなかった場合は、後日、聞き出してください。
理由は、普通は、教えてくれます。
政府も公的機関も、処分の理由は答えなければならないというのが、行政の基本論理だからです。
金融庁からもそう指導されています。
日本政策金融公庫の担当者に聞けば原因を教えてくれるので、原因ごとに上述した対策を取ってください。上述したように半年たたなくとも融資を受けられる場合もありますし、逆に、もっと時間がかかる場合もあります。

しかし、どうしても、あいまいな答えしかない場合は、だいたい、個人情報情報がらみです。
個人情報保護法が絡んでいるので、明言ができないのです。
個人情報保護法は解釈論が複雑で、場合によっては申込者から、個人情報の目的外使用だとか、目的外取得だとかクレームを受けるおそれがあるので、明言ができないのです。
謝絶理由について担当者からあいまいな答えしかない場合は、信用情報や犯罪歴等に問題がある場合がほとんどです。
信用情報はリカバリーができる場合がありますので、その場合は、上述の対策を打ってから挑戦してください。

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