法人口座の開設を断られ、作れません。どうしたらよいですか?

この記事を書いた人
工藤聡生

公認会計士・税理士
元銀行員、20年にわたり、創業融資、銀行融資、VCからの資金調達を支援てきました。資金調達の累計額は、100億円以上です。

会社を作りましたが、ある銀行で、法人口座の開設を断られてしまいました。ほかの銀行にもあたってみる予定ですと、どこも、厳しそうです。どうしたら、法人口座を作れますか。顧客との取引も始まっているので、とても焦っています。

マネーロンダリング防止のため、法人口座開設は、一般的に難しくなっています。私も個人的に苦い経験をしています。会社を設立した際に、個人として長く付き合いのあるAメガバンクでは、法人口座を開設できましたが、ほかのBメガバンクでは断られてしまいました。公認会計士の資格があるから大丈夫と思っていたのでかなりショックでした。さらに法人口座を開設できたメガバンクでも、ネット取引を始めるときに、厳しい審査がありました。すでにBメガバンクで断られて痛い思いをしたあとだったので、Aメガバンクから求められる以上の資料をあれこれと用意して、パスしました。次から次に資料を出していくなかで、担当者の口調や態度が、和らいでいくのが感じられました。
以下、法人口座開設を断られる具体的な理由について解説したあと、具体的な対策を7つ、ご提案します。その中で、わたくしども実際の経験から、利用可能な銀行もご紹介します。

1 法人口座開設が断られる理由

法人口座の開設が断られる理由は多岐にわたりますが、以下に代表的な理由を説明します。

  • 創業したばかりで、事業の実績がない  会社を設立したばかりで、まだ事業の実績がない場合、銀行はその会社が本当に事業を行うかどうかを判断しにくくなります。これにより、架空の会社として疑われる可能性があります。ですので、創業したばかりの会社が口座開設をするのは、一般的に、手間がかかります。
  • 事業内容や目的が分かりにくい  事業内容や目的が不明瞭であると、銀行はその会社が何をしているのか理解できず、不正利用のリスクを懸念します。特に、定款に多くの事業目的を記載している場合、何を主な事業としているのかが分からず、審査に通りにくくなります。事業目的の明確さと関連しますが、口座開設の目的が明確でない場合も審査に通りにくくなります。
  • 資本金が少ない 資本金が少ないと、銀行はその会社が健全な経営を行う意欲や能力があるかどうかを疑います。特に資本金が50万円以下の場合、事業継続の意欲が低いと見なされることがあります。
  • 代表者の信用性に欠ける 代表者の経歴や過去の金融事故(破産や任意整理など)がある場合、銀行はその人物を信用できないと判断し、口座開設を断ることがあります。また、反社会的勢力との関わりがある場合も同様です。
  • 登記した住所で事業を行っていない 登記された住所と実際に事業を行っている場所が一致しない場合、銀行はその会社の実態を把握できず、不正利用のリスクを懸念します。特にバーチャルオフィスやレンタルオフィスを利用している場合は注意が必要です。
  • 必要な許認可が未取得 融資と同様に基本的に許認可取得後でないと法人口座開設は、困難です。
  • 実態が不明瞭 固定電話がない場合やホームページがない場合も、会社の実態が不明瞭と見なされることがあります。

これらの理由から法人口座開設が断られることがあります。対策としては、事業内容や目的を明確にし、必要な書類を揃え、信頼性を高めることが重要です。また、ネット銀行や信用金庫など審査基準が比較的柔軟な金融機関を選ぶことも一つの方法です。

2 法人口座を開設するための具体的な対策

1. 必要書類を準備すること。

法人口座を開設する際には、多くの書類が必要です。以下は一般的に必要とされる書類のリストです:

  • 履歴事項全部証明書(会社謄本):会社の基本情報が記載された書類。
  • 印鑑証明書:法人および代表者の印鑑証明。
  • 代表者の本人確認書類:運転免許証やパスポートなど。
  • 定款:会社の基本規則を定めた書類。
  • 賃貸借契約書の写し:オフィスや事務所の賃貸契約書。
  • 法人設立届出書:税務署に提出した法人設立届出書。
  • 事業の許認可が確認できる書類
  • 法人番号が確認できる書類
  • 創業計画書、または事業計画書:事業内容や将来の収支計画を詳細に記載したもの。

これらの書類は、金融機関によって若干異なる場合がありますので、事前に確認しておくことが重要です。

2. 事業内容や目的を根気よく明確に説明すること

金融機関は、口座開設申請時に事業内容や目的を詳細に確認します。以下の点に注意して説明を準備しましょう:

  • 具体的な事業内容:何を提供する会社なのか、どのようなサービスや商品を扱うのかを明確に説明します。
  • 事業計画:将来的なビジョンや目標、どのように成長していく予定かを具体的に示します。
  • 実績:過去の取引実績や顧客リストがあれば、それも提示すると良いでしょう。

特に新規設立の場合は、創業計画書などでしっかりと説明することが求められます。

3. できるなら資本金を100万円以上にする

資本金が少ないと審査に不利になることがあります。一般的には最低でも100万円程度の資本金があると安心です。資本金が少ない場合は、資本金額を重視しない金融機関を選ぶことも一つの方法です。

4. 固定電話とオフィス

固定電話や実際に占拠する空間のあるオフィスがあることは、会社の信頼性を高める要素となります。特に固定電話は、会社としての実態を示すためにも重要です。ですので、バーチャルオフィスを利用する場合は、その旨を金融機関にしっかりと説明し、必要な追加書類を提出するようにしましょう。

5. 金融機関ごとの審査基準を理解

金融機関によって審査基準は異なります。一般的には以下の順で審査が厳しくなります:

  • メガバンク(都市銀行)
  • 地方銀行
  • 信用金庫・信用組合
  • ネット銀行

創業期であれば、ネット銀行や信用金庫など比較的審査が柔軟な金融機関から始めると良いでしょう。

6.具体的にお勧めの銀行

GMOあおぞらネット銀行は公式サイトでも「バーチャルオフィス可」と明記しており、バーチャルオフィスでの法人口座開設に寛容です。振込手数料や口座維持手数料が安価であり、経費削減に寄与します。オンラインで申し込みができる数日以内に、利用を開始できます。また、振込画面や入出金明細の視認性・操作性が高いと言われています。

住信SBIネット銀行も法人口座を開設しやすいです。住信SBIネット銀行も振込手数料が安く、オンラインで手続きが完結するため便利です。

バーチャルオフィスを選ぶなら、ネット銀行と提携しているバーチャルオフィスを選ぶと、法人口座開設がスムーズになります。

メガバンクで口座を開設する場合は、しっかりと、必要な書類を準備する必要があります。また、バーチャルオフィスを利用するなら、信頼性の高いバーチャルオフィスを選ぶことが重要です。メガバンクは、審査に2~3週間は、必要です。

7. 個人としての実績

個人として口座があり取引実績があるなら、それは必ずアピールしてください。

紹介の活用

取引先や知人から紹介してもらうことで、審査通過率が上がる場合があります。

8.口座開設の裏技

日本政策金融公庫の創業融資を利用されている方なら、創業融資の契約書を銀行にもっていき、『着金先にしたいので口座を開設した』と言えば、口座開設は、ぐっと容易になります。日本政策金融公庫の審査を通過して、お金を借りることができたという事実が、信用を与えてくれるのです。日本政策金融公庫の融資審査は、創業計画書に基づき、厳しく実施されるので、それを通過したことは、他の金融機関に対して、かなりの説得力をもちます。ちなみに、日本政策金融公庫は、中小企業者に対して公的な融資を提供するだけで、預金を預かっていないので、着金先として、別の銀行や信用金庫の口座が必要となるのです。

まとめ

質問者さまの場合は、すでにひとつの銀行に断られてしまいましたが、めげることなく、ほかの銀行にあたってください。その際に、給与の受取やクレジットカードなどで、付き合いのある銀行や、ネット銀行を優先させるべきでしょう。知人に紹介してもらうのもよいでしょう。また、創業融資を借りられたのなら、上述した裏技をつかって日本政策金融公庫の創業融資審査をパスしたので、着金先が欲しいということを全面に押し出して口座開設の必要性を説明してください。

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