自己資金不足、信用情報の傷、事業経験不足を克服した創業融資事例

この記事を書いた人
工藤聡生

公認会計士・税理士
元銀行員、20年にわたり、創業融資、銀行融資、VCからの資金調達を支援てきました。資金調達の累計額は、100億円以上です。

自己資金不足、経験不足、事故暦、事業譲渡、高額融資の事例を集めました。
こういったマイナスの要素がある場合は、審査担当者もサラリーマンですので、責任を問われるのを恐れて謝絶してくることが少なくありません。
しかし、緻密な損益計画や資金繰り計画をスムースに話すことができれば、マイナス評価要素を克服して、挽回することは十分に可能ですので、手間を惜しまないでください。

業種調達金額障害とその解決方法
飲食店(バー)600万円【みなし自己資金で資本金を増強した事例】
自己資金は800万円と潤沢でしたが、そのほとんどが第三者からの出資でした。
日本政策金融公庫は、自己資金の大半が親からの贈与や第三者からの出資だと自己資金とみなしてくれません。 ほとんどの場合は謝絶されます。
これは、残念ですが、内部的に統一された審査の考え方です。
本人の出資額を増やさないと、審査は通らないと担当者から指摘されました。
わたくしどもは、ご依頼者さまの財務状況や事業経験についてお聞きしてさまざまな方法を検討しました。
その結果、『みなし自己資金』という手法を使うことにしました。 『みなし自己資金』とは、すでに使われてしまったお金のうち、事業のために使われた部分があれば、それを自己資金とみなしてもらう取扱のことを言います。
代表者は、バー開業の1年程前から、開業に備えてヤフーオークションなどで、気に入った外国の酒や食器を集めていました。 領収証等を集計したところ、120万円相当額でした。
これを『事前導入設備』として表にまとめて提出をして、自己資金としてみなしてもらえるように創業計画書を作りなおしたのです。

ただ、在庫仕入については、みなし自己資金は、なかなか、認めてもらえません。 仕入や経費は証憑が残っていないことが多いので、実際は生活費に使っていても、判別がしづらいからです。
そこで、帳票を時系列で整理して、仕入れ在庫の銘柄等を明確にし、バーの経営に必要な商品であることを強くアピールし、『設備』と言い替えました。
その甲斐あってか、すべてを自己資金として認めてもらいました。
自己資金がさらに厚くなっただけでなく、代表の出資比率が大きくなりました。
また、計画的に仕入れをしてきたことが、創業に対する計画的な準備としてみなしてもらえたので、起業に対する姿勢や事業計画についても評価を上げることができました。
結果として、無事、満額回答を得ることができました。 自己資金が不足しているが、事業のためにこつこつとためてきた事業用の資産はあるという場合には、『みなし自己資金』の取り扱いのご活用をご検討ください。
インターネットオークションでの販売業400万円【事業経験不足、自己資金のほとんどが贈与】
代表がとても若く、かつ、事業経験にとぼしかったケースです。しかも、自己資金は親からの贈与がほとんどだったので、かなり難しいケースでした。事業経験が警備員のアルバイトぐらいしかなかったので苦労しました。インターネットで小遣いを稼いできた行為を、『事業経験』として詳細にアピールして理解を得ました。事業経験のない分だけ、損益計画や資金繰り計画を詳細にすらす

らと説明できるように教育指導しました。

医療機器の製造業600万円【事業計画が不明確だった】
公庫の相談窓口で計画が甘いと言われて、代表の方はかなり意気消沈して相談に来られました。口下手な方でしたが、よくよく話を聞くと、事業経験がしっかりとあり、製品も十分に市場で戦えるものでした。わずかだが個人事業として販売実績もありました。製品パンフレットをわかりやすく書き換えてもらい、販売実績もアピールしました。さらに事業計画を精緻化して、資金計画も3年分をきちっと説明できるようにすることによって問題なく、満額回答を得ました。
インターネット通販700万円【創業メンバーの一人に金融事故歴があった】
創業メンバーの1人に金融の事故暦がありました。重要な創業メンバーが取締役や株主として露出できないので、とても難しいケースでした。経営権については株主間特約で買取請求権を設定して、後日、株主となり、取締役にも就任するという方法をとりました。インターネット通販ですので、SEO対策について詳細な記述をして、販売力をアピールしました。また、精密でリアルな損益計画・資金繰り計画を作りこみ、面談への対応も十分に準備したので、無事に調達に成功しました。
飲食店1400万円【高額融資】
希望調達額は創業融資としてはやや大きすぎでした。しかし、高級割烹料理店をつくろうとしていたので内装、備品への投資額を削ることはできませんでした。そこで、事業計画を精密化することによって満額回答を目指しました。視覚に訴える資料を作成して、コンセプトをわかりやすく説明しました。立地と客層に関する調査資料も添付し、高い利益率が実現可能であることも根拠付けしました。さらに過去の事業経験も詳細にアピールして、高級戦略が問題なくうまくいくことを力説しました。結果として、高額調達に成功しました。
人材派遣業700万円【事業に失敗して廃業したことがある】
社長には、かつて人材派遣業の会社をつぶした経験がありました。社長はそのことをとても気にされていました。そこで、サラリーマン時代の経験を生かして、特定業種に絞り込んだ人材派遣業を起業するという差別化戦略を立てて、事業計画を精密に作りこみました。その結果、事業の将来性を否定されることはありませんでした。
ネイルショップ500万円【競争が激しく廃業率が高い業種】
すでに大手のチェーン店が、低価格戦略で市場を牛耳っているため、審査担当者がシビアに判断して、否決あるいは減額されやすい業種でした。立地や、施術方法、店のコンセプトがユニークであることをアピールする事業計画を作成しました。そのユニークさと代表の過去の事業経験の記述がうまくリンクされた事業計画を作りました。結果として、面談もすんなりとおわり、調達に成功しました。
IT(SNS事業)400万円【IT事業であるため事業内容がわかりづらく、しかも事業計画が壮大すぎる】
新規性が高く、かつ、審査の面談者の理解を得づらい事業でした。しかも、フェイスブックやミクシーといったガリバーにいまさら対抗できるのかと懸念されるビジネスプランでした。そのまま申し込んでいたら否決されていたと思われます。大手のSNSと競合するのではなく、むしろ補完して、受注を大手からもらえる関係にあるのだとアピールしてもらいました。また、事業経験や過去の受託業務など、SNSに関連する実績をできるだけ拾いあげてもらい、新規事業というよりもすでに経験のある事業の立ち上げであるというニュアンスを強調してもらいました。
アパレル300万円【自己資本が少なめでした】
自己資金額が100万円と少な目でした。また、創業者には事業経験がありましたが、アルバイトで収入も毎年1~2百万円程度と少額でした。まず、事業経験の内容を詳細にアピールしました。収入の少なさを能力の低さと思われてはいけないので、デザイナーとしての能力を添付資料もつけて詳細に記述しました。その結果、ネガティブな要素に突っ込みを入れられることなく、満額回答を得ることに成功しました。
かばん製造

800万円


追加融資
600万円
【短期間のうちに追加融資が必要となった】
すでに事業経験のある経営者だったので、最初の創業融資は、日本政策金融公庫から問題なく満額回答を得ました。紹介した日本政策金融公庫の担当者からは、感謝の電話をいただいたほどです。しかし、業績があまりに順調に推移したために、追加の運転資金が必要となりました。まだ初回の創業融資から日数がたっていないので、通常は、追加融資は難しい状況でした。しかし、当事務所で、月次決算を緊急にまとめて、さらに創業時からの受注状況も顧客ごとに集計して、好業績が本物であることをアピールしました。資金繰り計画書も詳細にアップデートしました。制度融資に申し込み、600万円の在庫資金を追加で調達しました。
保育施設

500万円

【自己資金不足、しかも事業経験不足】
自己資金、事業経験ともに乏しいケースでした。親の資金援助は得られる状況でしたが、親からの贈与資金は、自己資金として認めてもらえない場合もあります。まず、親の財務状況を詳細に説明する資料を添付して、資金が間違いなく贈与されたものであり、返金不要であることをアピールしました。また、事業経験についても、前職での営業やマネジメントの経験を強調しました。前職と保育事業との関連性も強く主張しました。精緻な資金計画を作り、代表がすらすらと言えるようになるまでキャッチボールしました。 代表の熱意ある姿勢も受け、必要な資金を調達することができました。
高齢者宅配弁当サービス

400万円

【自己資金不足、しかも事業経験不足】
事業経験がなく、かつ、自己資金もかなりの部分は第三者の出資を受けていました。難しいケースでしたが、第三者が事業協力者であり、一定のノウハウがあることを強くアピールすることによって、資金調達には成功しました。しかし、代表は、その後、事業経験の不足から黒字化するまでに数年を要し、資金繰りについては、当事務所の担当者ともども相当に苦労させられました。
印刷・広告宣伝業

800万円

【競争過多の業界、しかも前職の会社もとても経営が厳しかった】
採算をとるのがとても難しい事業です。広告用印刷物は、インターネット広告に押されて需要が激減しているからです。実際に、代表の前職での事業経験は、ジリ貧そのものでした。業務提携によって仕事を活発に受注できる営業体制があることをアピールし、さらに緻密な損益計画と資金繰り計画をつくってなんとか調達に成功しました。
建設業

800万円

【自己資金不足、但し、事業経験は豊富】
事業経験は十分なかたでしたが、自己資金がありませんでした。自己資金が全額親からの贈与という不利な状況でした。事業経験を全面にだしました。いままでの営業実績や、潜在顧客リスト、参入障壁の高さを強調して、事業計画が極めて実現可能性の高いことをアピールしました。代表とは何度も面談して事業計画書を磨きあげ、面談力を強化しました。その結果、満足いく資金調達を達成することができました。
木材製品の卸・販売店

800万円

【カードローンが多額にあった】
事業経験は全く問題ありませんでしたが、カードローンが500万近くありました。カードローンを返済すると自己資金が少なくなってしまうために、会社創業までの間の個人事業での利益を自己資金にするという苦肉の策を立てました。事業経験を詳細にアピールして、3年間の詳細な資金計画を添付して、必要資金を調達しました。
学習塾

600万円

【事業経験不足、しかも別会社がある】
代表は、学習塾での事業経験がありませんでした。代表のほかのビジネスでのマネジメント経験や営業経験をアピールするとともに、代表がすでに経営している会社の財務状況を詳細に説明することによって融資に成功しました。新規事業と既存事業をいわば、連結して資金計画を説明できるようにしました。代表のいままでの、他の事業での経営の実績を隠すことなく、逆に積極的に説明することによってうまくいったケースです。
事業譲渡案件(IT事業)

800万円

【事業の譲り受けによる創業】
事業譲渡による創業の場合には、譲渡価格が高すぎたり、譲渡の条件がなかなか決まらないことが創業融資の調達を困難にします。このケースでも面談の直前に譲渡側が価格を吊り上げてきて代表を青ざめさせました。スキームを練り直すことによって、譲渡代価の上乗せ分の支払を先送りし、創業融資で調達した資金でスケジュールどおりに事業譲渡を成功させました。

general

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