日本政策金融公庫の据置期間とは?

この記事を書いた人
工藤聡生

公認会計士・税理士
元銀行員、20年にわたり、創業融資、銀行融資、VCからの資金調達を支援てきました。資金調達の累計額は、100億円以上です。

据置期間とは

据置期間とは、融資を受けた際に元金の返済を猶予し、利息のみを支払う期間のことを指します。この期間中は元金の返済が発生せず、利息のみを支払うため、売上が安定しない時期に資金繰りを安定させるために利用されます。

据置期間の理由

据置期間は、事業が軌道に乗るまでの収益が上がらない期間を考慮して設定されます。特に創業期は、なかなか企業の売上は伸びません。一方で、経費は、発生してしまいます。しばらくの間、借入返済を待ってもらえれば、資金繰りは、とても楽になります。資金繰りが楽になれば、その分だけ、安心して、事業に集中できるので、より早く売上を伸ばすことができます。

据置期間は、どれぐらい設定できるのか

無担保無保証で借りた創業融資でも、据置期間の設定は可能です。とくに創業したての会社は、収益の確保が難しいためです。
日本政策金融公庫では、据置期間は以下のように設定されます:

  • 新規開業資金:運転資金、設備資金ともに最大5年間
  • 一般貸付:運転資金は1年以内、設備資金は2年以内

ただし、これらはあくまでも最大期間であり、企業の状況や担当者の判断によっては、据置期間が3か月~8か月程度になることがよくあります。担当者が借り手の返済能力をどう判断するかに依存します。

据置期間の設定についての注意点

希望する据置期間が必ずしも設定されるわけではなく、日本政策金融公庫の担当者によって最終的に決定されます。創業計画書の内容、返済期間等が考慮されます。交渉次第の面はありますが、1年や2年という期間が当然の権利という姿勢で交渉しても、据置期間は、伸ばしてくれません。月次の資金繰り表などを使って、合理的かつ冷静にこちらの希望の据置期間を提示しましょう。据置期間を延ばしたければ、添付する資金繰り計画書で客観的にアピールするのがポイントです。

具体例

例えば、日本政策金融公庫から400万円の融資を受けたと仮定しましょう。返済期間は、6年、据置期間は、12カ月、金利は、2%とします。据置期間中の1年間は利息のみの支払いとなり、その後5年間で元金を返済していくことになります。このように据置期間中は毎月の返済額が軽減されるため、事業運営に集中しやすくなります。

具体的には、下記のようになります。据置期間後は、400万円÷5年=80万円の元金を返済しなければなりませんが、元金が減少するにすれて、利息支払い額が減少していくことがわかります。

据置期間のある創業融資の返済計画

参考となる私どもの具体的な事例

新型コロナウイルス感染症特別貸付の事例 

日本政策金融公庫から3,000万円の融資を受けた事例では、据置期間が1年設定されました。この時は、中小企業の事業継続を支援しなければならないという方針だったので、据置期間の設定が甘かったです。自然災害時には、据置期間を長く設定してくれますが、こういった措置を標準と考えるべきではありません。

美容院、飲食店などの店舗系のビジネスの事例 

わたくしども経験ですと、美容院などの店舗系のビジネスを開業する際、既存の顧客を持っていると判断されるとすぐに売上が見込めるため、据置期間は短く設定される傾向があります。逆に、これから新規顧客を開拓するということであれば、据置期間は、長くなります。同じ業種だからといって同じ据置期間が設定されるわけではありません。据置期間を長く設定したければ、月次ベースの資金繰り計画を出して、なるべく長く、据置期間を設定してもらうようにしましょう。

据置期間後のデメリット

据置期間中は利息のみの支払いとなるため、元金は減らず、据置期間終了後には元金と利息の両方を返済する必要があります。上記シミュレーションでもおわかりのとおりに、返済期間全体は短くならないので、より短い期間で返済しなければならなくなり、据置期間後の元金の返済額は、大きくなります。それをあらかじめ考慮した資金繰り計画を立て、準備しておく必要があります。その時点で、資金繰りがきつくなるということでしたら、他行などにもあたり、事前に追加融資の準備を進める必要があります。
据置期間の間は、元金が減らないので、利息総額も大きくなるのもデメリットです。
また、当初から資金繰りにそれほど問題がないということでしたら、据置期間を利用せずに、早めの完済を目指すのも、一つの財務戦術です。
ただ、わたくしどもの印象としては、創業したての起業の場合は、想定どおりにビジネスが成長することは少ないので、据置期間は、設定しておいた方がよいでしょう。
また、元本の返済が進んでいないので、追加融資を受けることのできるタイミングが、遅くなります。元本の返済が進んでいれば、計画より事業が拡大した等の理由で半年もたてば追加融資を受けられることがよくあるのですが、その時点で据置期間により返済が進んでいないと追加融資が見送られることがあります。

据置期間後の資金繰りがとても苦しい場合

据置期間経過後には、元金をより短い期間で返済しなければならなくなります。一気に資金繰りはきつくなります。どうしても、返済するのが難しいのであれば、公庫へ相談してリスケしてもらってください。公的金融機関なので意外とすんなりとリスケに応じてくれます。ただ、リスケには資金繰り計画込の事業計画書が求められますし、追加融資が難しくなります。その点も考慮して判断する必要があります。

まとめ

日本政策金融公庫の据置期間は、事業開始直後など資金繰りが厳しい時期に返済負担を軽減するために設けられています。新規開業資金では、運転資金・設備資金ともに最大5年間とされていますが、企業の状況や担当者の判断によって実際には、

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