新創業融資制度

この記事を書いた人
工藤聡生

公認会計士・税理士
元銀行員、20年にわたり、創業融資、銀行融資、VCからの資金調達を支援てきました。資金調達の累計額は、100億円以上です。

この制度自体は、なくなりましたが、内容がわかりやすく、基本的には現在の日本政策金融公庫の創業融資と変わりがないので、ここにご紹介します。

形式的な概要

日本政策金融公庫には、新規に開業される方のために無担保・無保証人で長期間にわたり、融資をしてくれる制度があります。
無担保、無保証なので、会社がつぶれても社長個人は、返済責任を負いません
『うそ!』と思われるかもしれませんが、本当です。
審査ハードルはそれほど高くはありません。

  • 自己資金の要件 創業資金総額の10分の1以上
  • 融資限度額 3,000万円(うち運転資金1,500万円)
  • 返済期間 設備資金:20年以内 運転資金:7年以内(原則)
  • 据置期間 2年以内

メリット

ビジネスをスタートするためには、設備資金や運転資金を確保しなければなりません。
設備や人的資源がなければ、せっかくのビジネスプランも実行できません。
一方で、多くの金融機関が、2期の決算書の開示を求めますので、起業家が銀行からお金を借りるのは容易ではありません。
決算書を出さなくても貸してくれるのは、創業融資だけです。
返済期間が長く、金利が安い融資によって、設備や事務所、人的資源等を確保できるのは、創業者にとってはとてもありがたい話なのです。
新創業融資制度では、設備資金であれば、返済期間を20年まで延ばすことができます。
しかも、無保証ですから、経営者自らも、保証人になる必要はありません。
武運つたなく会社が倒産することになっても、社長が個人的に借入金を返済する必要はありません。
金融機関とお付き合いのないかたは、あたりまえのように感じられるかもしれませんが、社長が個人保証をせずにお金を金融機関から借りることができるというのは、実績のある会社でもめったにあることではありません。
以上、過去の経営実績がなくとも、低金利、無担保、無保証でお金を貸してくれるのがメリットです。

金利と返済期間

金利は、2%前後ととても低めです(※1)。
但し、市場動向で変動しますので、必ず、日本政策金融公庫のHPで確認してください。
無保証人・無担保の融資としては、金利は、低く抑えられています。
また、返済期間は、設備資金であれば20年、運転資金でも最長7年まで設定できますので、無理なく返済できるでしょう。
2年以内で据置期間も設定できます。
設定の裁量は、公庫側にあるので実際の据置期間は半年前後が多いです。
据置期間とは、利息の支払だけで元本の支払を待ってもらえる期間です。

※1 金利は、時々の市況、特例により変動します。創業支援のための特例制度、雇用拡大の支援措置、女性・若者・シニア起業家支援などを組み合わせることにより、1%以下の金利で借りられる場合があります。

自己資金

創業資金総額の10分の1の自己資金が必要とされています。
しかし、事業経験が6年以上あれば、自己資金要件は、なくなります。
ただ、実際の審査では、自己資金がないとなかなかお金は貸してもらえません。
わたくしどもがお付き合いしている日本政策金融公庫の支店長さんも、『国からは、自己資金がなくても無碍にに断るなと言われているが、実務的には無理な話です。』とおしゃっています。
実務的には、自己資金の2.5~3倍ぐらいが平均的な融資額と考えておいたほうが無難でしょう。

申込期間

税務申告を2期終えるまでに申し込まなければなりません。

融資実績

融資実績は豊富にあります。
この制度は、実際に積極的に運用・実施されています。
全国で毎年1万件くらいの融資実績があり、多くの創業者に利用されています。
お題目だけで、実際には、事例のすくない融資制度を多々見かけますが、この制度は積極的に運用されています。
事業計画さえしっかりとしていれば、融資をしてもらうことは十分に可能なのです。

審査について

しかし、申し込んだすべての人が融資を受けられるわけではありません。
日本政策金融公庫も、金融機関ですので、貸す貸さないの判断は、貸し手に自主的な裁量権が与えられております。
理由も言わずに融資を断ることができます。
現実的でいいアイディアをもっていても、説得力のある事業計画で担当者を納得させられなければ、融資をうけられないこともあるということです。
融資を受けられても、大幅に融資額を減額されてしまうということもあります。
平均的な成功率は、約50%です。

実際の融資額について

形式的な融資限度額は、3,000万円ですが、運用上は、1,000万円を超える融資は、めったに実行されません。
実際に融資を受ける金額は、平均的には300万円くらいです。
しかし、次の諸条件がそろった場合には、1,000万円ぐらいの高額満額融資も十分に可能です。

  • 自己資金の出所を明確に説明する。
  • 信用情報をクリアする。
  • 創業計画書で創業する企業の強み、差別化戦略を明確かつ力強く記述する。
  • ビジョン、理念を熱くかたり、人格の誠実さを印象づける。
  • 創業者の事業経験を巧みにアピールして、『だから強い会社になります』とアピールする。特に営業実績をアピールする。
  • 損益計画、資金繰り計画を頭に叩きこみ、すらすらと説明する。数字につよい経営者という印象をもってもらう。

新創業融資制度廃止によって変わったこと

創業者は、新規開業資金という原則的な融資制度を利用することになります。主な形式的な概要は次のように変わりました。

  • 自己資金の要件 なし
  • 融資限度額 7,200万円(うち運転資金4,800万円)
  • 返済期間 設備資金:20年以内 運転資金:10年以内(原則)
  • 据置期間 5年以内

形式的にはかなり緩くなりましたが、1千万円を超える創業融資を引っ張ることは、以前より容易となりましたが、それ以外は、実質的にはほとんど変化はありません。

general

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