公認会計士・税理士
元銀行員、20年にわたり、創業融資、銀行融資、VCからの資金調達を支援てきました。資金調達の累計額は、100億円以上です。
無担保・無保証のスタートアップ創出促進保証
会社で借入をしても、通常、経営者保証を求められるので、経営が行き詰まれば、経営者は、責任を取らされます。
統計的には、創業者の8割がこの不安を抱えています。
創業者が、低利で資金調達する方法は、主に、二つです。
日本政策金融公庫による融資と、保証協会の保証と自治体のバックアップにより、信金や銀行などから借りる制度融資です。
日本政策金融公庫の場合は、経営者保証なしで創業者にお金を貸してくれる『新規開業資金』を利用することができます。
しかし、歴史的には、制度融資の場合、創業者は経営者保証をしなければなりませんでした。
会社が返せなくなった場合には、経営者は責任を取らなければならなかったのです。
しかし、制度融資の場合も、経営者保証を不要とする保証制度が創設されました。
スタートアップ創出促進保証という制度です。
この保証制度では、創業時の借入金に対して個人的に責任を負うリスクは、ありません。
会社がつぶれても、経営者は、借入金を返済する義務を負わないのです。
創業者にとっては、朗報です。
この保証制度の主な概要
■保証対象者 創業予定者や創業後5年未満の法人です。
■利用限度額 3,500万円。
■対象資金 運転資金、設備資金
■保証期間 10年です。
■保証割合 100%
■金利 金融機関所定
■保証料 各信用保証協会所定の創業関連保証の保証料率に0.2%上乗せした保証料率
■据置期間 1年(一定の条件を満たすものは、3年以内)
■担保 不要です。
■保証人 不要です。
■創業計画書の提出が、必要です。
■自己資金 税務申告の一期目が終了していない創業者の場合は、10分の1以上の自己資金が求められます。
■3年目および5年目のタイミングで中小企業活性化協議会による「ガバナンス体制の整備に関するチェックシート」に基づいた確認および助言を受ける必要があります。
実際の条件
まず、借入限度額は、実際には、2,000万円ぐらいが上限でしょう。それ以上となると、財務諸表などの実績が求められるでしょう。
創業計画書を作成しなければならないのは、通常の創業融資と同じです。
融資の公的な要件として、自己資金は、創業資金総額の10分の1でよいと設定されていますが、実際には、自己資金の2から3倍が、融資の限度額となるのも同じです。
中小企業活性化協議会によるガバナンスの確認
中小企業活性化協議会とは、中小企業の活性化を支援する公的機関で各都道府県に設置され、商工会議所等が運営してます。この協議会によるガバナンスに関する確認、および助言を受けることが、この無保証の制度融資のもう一つの条件です。
融資を受けてから3年目と5年目に、協議会が策定した『ガバナンス体制の整備に関するチェックシート』に基づいてチェックを受けます。ガバナンスとは、企業統治のことです。健全な経営が行われているかどうか、チェックシートをつかって確認し、助言が行われるということです。
この事後的な、中小企業活性化協議会によるチェック項目は、次の三つです。
- 経営の透明性:金融機関は経営者への定期的にアクセスできるか、情報は適切に開示されているか、その開示された情報の内容は正確か。
- 法人個人の分離:資金の流れは事業と個人の間で適切に分離されているか、事業資産を個人が所有している場合に賃料は適正か。
- 財務基盤の強化:債務償還力、安定的な収益性、資本の健全性
経営者保証不要の融資の条件と内容は同じです。
ですので、このガバナンスのチェックで良い評価をもらえないと、プロパー融資で経営者保証不要にしてもらうのは難しいでしょう。
創業してから数年の中小企業がこのチェックリストを完全にクリアするのは、わたしの肌感覚としては困難ですので、日本政策金融公庫の無担保、無保証の創業融資をまずは優先させるべきだと思います。
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