公認会計士・税理士
元銀行員、20年にわたり、創業融資、銀行融資、VCからの資金調達を支援てきました。資金調達の累計額は、100億円以上です。
資金ゼロで飲食店を開業できるか?
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日本政策金融公庫の調査によれば、飲食店を独立開業するには、500万円~1,000万円ほどの資金が初期費用として必要です。
居抜きではなく、新たに座席のある飲食店を開く場合は、おそらく、保証金・礼金、設備費、運転資金などの創業総資金は、1000万円ぐらいになるでしょう。
内訳は、保証金・礼金・仲介手数料等で150万円、運転資金で200万円、厨房機器・備品で200万円、内装費用で450~500万円です。
日本政策金融公庫は、これだけの資金を自己資金0では、貸してくれません。
日本政策金融公庫の『新規開業資金』は、形式的な要件としては自己資金を要求していませんが、内部的な審査の裁量基準としては、少額融資を除いて自己資金が要求されています。この内部的な審査の裁量基準は、外部には公開されていません。
この点について、あいまいな表現をする専門家が多いのですが、それでは、逆に起業を目指す方のためになりません。
店舗型のレストランについては、自己資金0円で開業するのは無理でしょう。
テイクアウト・デリバリー専門で開業する △
ですので、創業総資金を減らす必要があります。
となると次の選択肢は、キッチンだけを借りる方法です。
店舗を持たず、ウーバーイーツや出前館などのプラットフォームを使って料理を配達したり、テイクアウトで販売したりするのです。
ただ、キッチンだけを借りる場合でも、保証金等が発生してしまいます。
その他の運転資金も必要ですので、やはり、創業総資金は約500万円ぐらいにはなってしまうでしょう。
やはり、この金額を自己資金0で借りるのは、至難の業です。
日本政策金融公庫と制度融資の協調融資の方法はありますが、自己資金0がネックとなります。
日本政策金融公庫か保証協会のどちらかに謝絶される可能性は低くありません。
ただし、好条件の物件が見つかり、創業総資金を500万円未満に抑えることができ、かつ親の支援などが100万円程度あるなら、可能性は高くなります。ただ、下記で記述している事業経験等の条件も満たす必要があります。
ゴーストキッチンで開業する 〇
次の選択が、ゴーストキッチンです。
設備のあるキッチンをレンタルする方法です。
シェアキッチンとかクラウドキッチン、バーチャルキッチンという言い方がされます。
呼称や契約形態はさまざまですが、要は設備のあるキッチンを部分的にレンタルするので、保証金等の初期費用を抑えることができます。
キッチンのレンタル費用のほかに要する費用は、メニュー開発費、タブレット・Wi-Fi環境、デリバリープラットフォーム費用ぐらいなので、必要資金をぐっと抑えられます。
ゴーストキッチンなら創業総資金を、200~300万円くらいに抑えることも可能であり、条件がそろえば、日本政策金融公庫の創業融資で総額を調達することは可能です。
なお、飲食店が軌道にのるには、半年ぐらいは必要です。とくに最初の3ヶ月ぐらいは、売上はなかなか伸びない場合がほとんどです。ですので、3ヶ月分ぐらいの運転資金も、必要な創業総資金として調達しておく必要があります。この資金を含めても、200~300万円に、創業総資金を抑える必要があります。
しかし、自己資金が0なので、他にも満たすべき条件がいくつかあります。
その条件は、
- 事業経験がしっかりしていること。
- 信用情報に問題がないこと。
- 飲食店として営業許可がとれること。ゴーストキッチンの中には、料理教室目的で営業許可がとれない場合があるので運営者に必ず確認してください。営業許可が取れなければ、融資はおりません。
- できれば、営業時間に制約がないこと。
- 理解のある審査担当者にあたること。審査は、裁量判断なので、どうしても人により差が生じます。自己資金0と聞いただけで強い拒絶反応を示す担当者もいます。残念ですが、これは運の問題となります。
問題は、営業時間の制約です。
営業時間に制約があると、事業の成長が阻害されます。
売上を伸ばして利益を確保するのに制約があるということです。
そのため、融資審査も厳しくなります。
キッチンカーで移動販売する
この場合も、車両を専門業者からレンタルした場合は、創業総資金を抑えることができます。
200万ぐらいに抑えることが可能であるなら、ゴーストキッチンの場合と同様に自己資金0円でも調達は可能です。
他の追加条件も、ゴーストキッチンの場合と同様です。
フランチャイズに加盟してキッチンも用意してもらう方法
フランチャイズ本部が、キッチンも用意してくれるなら、創業者は資金的には楽になります。ただ、資金的に好条件の場合は、多くの場合、その他の面で厳しい条件を突き付けられます。ロイヤルティが高く設定されれば、利益を吸い上げられ、厳しい経営を余儀なくされます。キッチンの使用方法についても制約が付くでしょうから、自分なりのブランドを作り出すことは難しいでしょう。ですから、いつまでたっても、苦しい生活が続く恐れがあります。
独立はできますが、一国一城を主となって事業を成長させるという本来の目的はおそらく達成できないでしょう。不当な契約にしばられ、実質的には、保証のない歩合制の非正規社員と同じ境遇に置かれます。
結局、フランチャイズ本部にキッチンまで用意してもらう方法は、長期的には不当に高いコストを払うことになります。
フランチャイズへの加盟自体は問題ありません
フランチャイズに加盟してスタートするのは、良い選択です。すばやく事業を始められますし、ノウハウも蓄積できます。
あたりまえのことですが、フランチャイズを選ぶときは、ウーバーイーツなどのプラットフォームでどれだけ評判が良いのか十分に検討してください。自分でも何度も試食してステルスマーケティングではないことを確かめてください。
一方では、自分の製品を作る自由は、確保してください。フランチャイズで本部に吸い上げられる利益は、ばかになりません。いつまでもフランチャイズに頼っていたら、事業は飛躍的には成長しません。最終的には、自力で商品開発をして自分のブランドを築かなければ、お金を稼げません。