公認会計士・税理士
元銀行員、20年にわたり、創業融資、銀行融資、VCからの資金調達を支援てきました。資金調達の累計額は、100億円以上です。
日本政策金融公庫等の創業融資を受けるときの審査は、どのように実施されるのですか?
- 起業家が、日本政策金融公庫や信用保証協会の保証付き融資(制度融資)を受けるときの審査は、どのように実施されるのですか?
質問の具体的な内容や、提出資料、注意すべき点について教えてください。
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日本政策金融公庫の場合を例にとってお答えいたします。
制度融資の場合も、審査ポイントは、ほぼ同じです。
まずは、借入申込書を提出します。
借入申込書には、次の書類を添付します。- 創業計画書
- 設備資金を借りる場合は、見積書
- 履歴事項全部証明書(法人の場合)
さらに、実際の審査では、次のような書類も提出が求められます。
- 入居する事務所の概要がわかる書類、たとえばちらしなど。賃貸契約書があればベターです。
- サラリーマン時代の源泉徴収票
- 過去半年の通帳。1年分を求められることもあります。審査の時に現物を持参します。
創業計画書には、売上の根拠や費用の内訳を詳細に書いてください。
審査でどっちみち聞かれますので、創業計画書の一部として、詳細に記述しておいた方が審査担当者の理解が早まりますし、心証はぐっとよくなるからです。
また、創業計画書への資金繰り計画の添付も必須です。
資金の必要額と返済可能額も必ず聞かれるので、最初から資金繰り計画で明確にしておいた方が心証は良くなるのです。
説明力も強まります。面談においては、審査担当者は、まず、事業の基本について質問をしてきます。
主に聞かれることと、答える際の注意点について以下、列挙いたします。- どんな経験と実績があるか? 直接的な経験がなければ、一般的なマネジメント経験を強調してください。
- 主力となる商品はなにか? 自分の強みを生かせるターゲットに絞ってください。なんでも売りますという姿勢は、なにもできませんと言っているのと同じことと考えてください。
- 競合といかに差別化するか? 事業経験から得られた強みで競合に勝つという趣旨で回答するのが最善です。
- 主なターゲットは? BtoBであれば、具体的な顧客リストがあるととても有利です。一般消費者相手であれば、勤務時代の営業実績等を強くアピールしてください。
- 事業の内容 IT等、わかりづらい事業内容であれば、理解の手助けとなる説明資料を添付してください。審査担当者は、すべての業種のビジネスモデルに熟知しているわけではありません。
- 売上目標は? 売上目標は、根拠を明確にしてください。売上単価と数量に分けて根拠づける必要があります。
- 月々の経費の内訳は? 創業計画書に沿って細かく答えられるようにしておいてください。
- 将来のビジョンは? 会社を大きくしていく意思と展望を語ってください。創業当初は、黒字である必要はありません。逆に黒字の計画をつくると融資額を減らされることがあります。2年目から軌道にのり、売上が伸び、黒字化して、きっちりと借金を返済できますという計画の方が自然ですし、運転資金を多めに借りることができる場合があります。
- 従業員は何人雇うのか? 公的機関の審査では、雇用機会を積極的に作ろうとする起業家の方が、どちらかと言えば良い心証を与えます。しかし、無理して雇う必要は全くありません。
創業の理由も聞かれますので、答えを準備しておいてください。
前向きなビジョンや夢をもって、以前から開業するつもりで準備を重ねてきたという趣旨で回答してください。
勤務時代の経験が今後の事業の差別化にいかに役立つかというストーリーを明確にしてください。
生活に窮して仕方なく突如、創業に追い込まれたと思われてはだめです。自己資金の形成方法については、詳しく調査されます。
借りたお金は自己資金とはみなされません。
通帳をみながらチェックされるので、ごまかすことは無理と思ってください。
合法的に膨らませるワザはいくつかありますが、自己資金は、平均的には融資希望額の3分の1ぐらいです。
制度的には、自己資金の要件は、緩くなっていますが、実際の審査では、そのあたりが目途とされています。また、審査担当者は、通帳をみるときに、申し込み者の財務的な状況も把握しようとします。
ローン返済がないか、公共料金の滞納がないか、家賃の滞納がないか、等々の個人の資金繰りそのものもチェックしますので注意してください。
これらのマイナス要素が発見されてしまうと審査はとても不利となります。
審査担当者の通帳の読解能力は、とても高く、マイナス要素を見逃すことはまずないと考えてください。融資する資金の使い道と、その返済方法についても聞かれます。
設備資金であれば、メーカー、型番、金額、購入先まで明確にしてください。
見積書をとる必要があります。
運転資金は、資金繰り表上で必要額をはっきりとさせてください。
『だいたいこれぐらい必要だ。』とか、『これぐらい欲しい』というようなあいまいな説明は、とても悪い印象を与えます。
返済額についても、資金繰り表上で毎月の返済額を明確にしてください。
返済を続けても資金繰りに問題がないことを理解してもらう必要があります。審査担当者は、貸したくても、具体的な事業の内容があいまいで貸せない場合があるとぼやいています。
意外かもしれませんが、公庫の担当者は、貸せば貸すほど人事評価が高くなるのですが、質問にちゃんと答えられない人は、内部的な審査をクリアできないので貸せないのです。
自分の評価を上げるために貸したいのですが、事業計画が曖昧すぎて貸すことができないのです。
資金調達では、明確な事業計画と資金繰り計画を練り込むことが何よりも大切です。
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