日本政策金融公庫の創業融資と、市区町村の創業融資はどちらが得か?

この記事を書いた人
工藤聡生

公認会計士・税理士
元銀行員、20年にわたり、創業融資、銀行融資、VCからの資金調達を支援てきました。資金調達の累計額は、100億円以上です。

創業予定の者です。
早く確実に創業資金を借りられる方法を教えてください。
現在、日本政策金融公庫と渋谷区の創業支援資金を検討しています。
どちらの方が早く融資を受けられますか?
また、両方とも申し込むということは可能でしょうか?
両方とも申し込んでダブルで融資を受けると詐欺とかにはなりませんか?

日本政策金融公庫の創業融資は、調達金額が大きく、審査が早いのが特徴です。
1千万円以上の高額融資は珍しくありません。
日本政策金融公庫の創業融資は、申込から1ヶ月~1ヶ月半ぐらいで実行されます。
金利も低く、無担保無保証です。
無担保無保証ですので会社がつぶれても経営者個人は責任を問われず、借金を返す必要はありません。
開業後の生存率は決して高くはありません。
無担保無保証だと経営者は、返済責任を一切負いません。
会社が潰れたあと生活を再生させようという経営者にとって創業融資の返済が免責され、ちゃらになるのはとても助かります。
失敗することを念頭に起業する経営者はいませんが、リスクとは想定外のことが起こることです。
融資制度を選択するときは、万が一のことも考慮すべきでしょう。

一般的に地方自治体の創業融資は、金利補給や信用保証料補助の制度があるので、実質的な金利を安く抑えられます。
たとえば渋谷区の場合は、金利補給や信用保証料補助があるので実質的な金利負担はとても小さくなります。
ただ、実際に調達できる資金額が小さいので、1000万円近い高額融資を望む方には向きません。
平均的には2~3百万円程度でしょう。
また区の創業融資は申し込みから実行まで時間と手間がかかります。
まず、経営相談員の指導面談を受けなければなりません。
面談は、一定の期間ごとに行われるので、時間がかかります。
経営相談員の指導面談は前哨戦にすぎず、そのあとに信用保証協会の融資審査をパスして初めて融資を受けられます。
融資審査もかなりの時間がかかります。
合わせると、区の創業融資は、申し込みから実行まで2カ月~2カ月半ぐらいかかることもざらなので、創業を御急ぎの方には向きません。ちなみに東京都の創業融資も同じくらい時間がかかります。
日本政策金融公庫に比べて1ヶ月以上は実行が遅れるので、起業の遅れによる売上ロスも小さくはありません。
また、区の創業融資制度の場合は、信用保証協会を利用するので、経営者は会社の借金について個人保証をしなければなりません。
ですので、会社が潰れたら経営者個人が借金を返済しなければなりません。
区の創業融資では、経営者個人がリスクをとらされます。

ただし、区の創業融資は経営者保証が必要ですが、東京都の制度融資であれば、経営者保証を必要としないスタートアップ創出促進保証制度を利用できます。ガバナンス体制の確認が行われるのでちょっと煩雑ですが、経営者保証は不要となります。

どちらかに断れる可能性があるので、ほぼ同時に申し込むということであれば、両方の融資制度に申し込んでも問題はありません。同一の設備投資、運転資金投資に関して二つの借入制度に申し込むこと自体には違法性はないからです。
ですのでその結果として、両者から借りてしまったとしても、あらかじめ違法な意図がなかったと推測できる状況にある限りは、問題はないでしょう。
ただし、日本政策金融公庫の融資が決まっているのにそれを織り込まずに二重申込した場合は提出書類に虚偽が含まれることになりますので融資契約を取り消されるおそれがあります。

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