公認会計士・税理士
元銀行員、20年にわたり、創業融資、銀行融資、VCからの資金調達を支援てきました。資金調達の累計額は、100億円以上です。
創業融資のための確定申告書の再発行
創業融資には、確定申告書の控えが必要なの?
個人事業主が創業融資を申し込む場合には、確定申告書の控えが必要となる場合があります。開業した翌年に、創業融資に申し込んだというような場合です。例を挙げれば、開業したのが、12月1日だが、創業融資に申し込んだのが、翌年の3月15日だというようなケースです。無担保、無保証、特別な低金利の創業融資は、税務申告が2期終了するまでは対象となるので、よく発生するケースです。ただ、開業した年と創業融資を申し込んだ年が同じ暦年であれば、不必要です。また、サラリーマンが個人事業を始めた場合は、会社で年末調整をしてもらっており、確定申告はしていないので、不要です。
確定申告書をいったん提出するともう終わったものだと思って、控えをいい加減に管理して、紛失してしまう人は少なくありません。ただ、紛失した場合は、創業融資を受けるためには必須資料なので、再発行してもらわなければなりません。
再発行するかどうかは、税務署の裁量事項ですが、結論からいえば、個人情報保護法により、時間はかかるものの、必ず再入手できます。
e-Taxで申告した場合の再発行
e-Taxの場合は、受信ボックスに受信通知と確定申告書控えのデータが残っているはずです。それらを、出力すれば、問題はありません。もともと、e-Taxの場合、確定申告書を送っても、受信通知しかもらっていません。受信通知で確定申告書の提出は、証明できます。ですので、受信通知を確定申告書のデータと一緒に、印刷すれば所得証明として十分なのです。
電子データの形で提出したいなら、電子申請等証明書制度を利用する方法もあります。これは、受信事実を電子的に証明してくれる電子データです。e-Taxから請求することができます。もらえるデータには電子署名がついているので、申告書の控えを、提出したことの証明となります。提出先が電子データを受け入れてくれるなら便利ですので、利用を検討してください。
情報開示手続による再発行
紙で確定申告書を提出している場合には、情報開示手続きを利用すれば、確定申告書の控えを再発行してもらえます。手続きは、確定申告書を提出した税務署の窓口または郵送で行います。情報開示手続きは、個人情報保護法に基づく手続きですので、ほぼ100%間違いなく、再発行してもらえます。
具体的な手続きの流れは、次の通りです。
- 確定申告書を提出した税務署の窓口または郵送で「保有個人情報開示請求書」を提出します。手数料は、1通当り300円です。現金納付か印紙貼付により支払います。この書式は、国税庁のウェブサイトからPDFファイルでダウンロードできます。税務署に直接行って、紙の用紙をもらうこともできます。本人確認書類は、運転免許証、健康保険の被保険者証、個人番号カード、在留カード、特別永住者証明書、住民基本台帳カード等の住所及び氏名が記載されている書類です。
- 郵送の場合は、本人確認書類の写しに併せて、住民票が必要となります。住民票は、開示請求をする日前30日以内に作成され、個人番号が記載されていないものに限ります。また、コピーは認められません。なお、本人確認書類として、個人番号カードの写しを送付する場合には、個人番号の記載がない表面のみの写しを提出してください。返信用切手代も負担する必要があります。
- 代理人に窓口に行って取得してもらう方法もありますが、委任状、実印の押印、印鑑証明書の添付等、手続きが煩雑になります。
- 保有個人情報開示請求書を提出後、30日以内に、開示・不開示の決定の通知が届きます。
- 開示決定通知を受け取ってから、30日以内に、開示決定通知に記載された開示実施の方法を選択し、「保有個人情報の開示の実施方法等申出書」に必要事項を記載して税務署に提出します。この申請書も国税庁のホームページからダウンロードできます。なお、開示決定通知書に、開示請求書で希望された開示の実施方法等により開示を実施することができる旨が記載されている場合で、開示の実施方法等に変更がない場合には、この申出書を提出する必要はありません。
- 開示の方法には、窓口に取りに行く方法と、郵送してもらう方法があります。急いでいる場合には、窓口に取りに行く方法を検討してください。郵送の場合には、送付に要する費用(郵便切手等)が必要となります。
開示が不可の場合は、不服審査の請求ができます。税務署は、この請求をいやがりますので、書類上のミスがない限りは、開示は、認められます。
上記の開示手続には、約1か月前後の時間がかかります。創業融資の申し込みは、そのあととなるので、起業の全体スケジュールを考えて、余裕をもって再発行してください。
なお、e‐Taxを利用した開示請求等のオンライン申請の方法もあります。この方法では、e-Taxの「イメージデータで送信可能な手続」を利用して、職場や自宅のパソコンからオンラインによる申請が可能です。e-Taxの操作に慣れている方は、こちらの方法の方が早いのでお勧めです。
閲覧請求
ほかに閲覧請求という手続きもあります。運転免許証等の本人確認書類と認印があれば、税務署で当日に閲覧できます。しかし、閲覧請求では提出した申告書を見ることができるだけで、書き写しはできますが、コピーをとったり、撮影したりはできないので、融資目的には役立ちません。さまざまな場面で必要となる書類ですので、時間はかかりますが、情報開示手続きで入手するのがお勧めです。
確定申告書の控えが必要となる場面
ほかに次のような場面で、確定申告書の控えが必要となります。
- 信用金庫や銀行からの融資の申請時
- 自動車ローンの申請時
- 住宅ローンの申請時
- 奨学金の申請時
- 保育園・幼稚園の入園申請時
融資を受けるときは、多くの場合に、過去2年分の確定申告を求められます。
確定申告書の控えは、自動車ローンや住宅ローンでも必要となるので、見当たらないときは、早めに再発行しておきましょう。
申告書等情報取得サービスについて
e-Taxの申告書等情報取得サービスをつかえば、紙で申告書を提出している場合でも、提出書類の控えをPDFファイルで入手できます。過去3か年分の申告書控えを入手できます。このサービスをうけるには、電子署名のためにマイナンバーカードが必要です。この方法で入手した確定申告書控えは、金融機関が提出書類として認めてくれない可能性がありますので、当面は、e-Taxの受信データを使うか、情報開示手続きをとって