日本政策金融公庫の『新規開業資金』と『東京都の創業融資』は、どちらが借りやすいか?

この記事を書いた人
工藤聡生

公認会計士・税理士
元銀行員、20年にわたり、創業融資、銀行融資、VCからの資金調達を支援てきました。資金調達の累計額は、100億円以上です。

以下は、日本政策金融公庫の創業融資と、代表的な制度融資である東京都の制度融資との比較です。
結論から言うと日本政策金融公庫の創業融資制度の方がすぐれています。

以下、比較ポイントごとに解説いたします。

借入できる額は、大差ありません。
おおかたの調達額は、自己資金の2~5倍です。

金利負担も、保証料まで含めると、ほとんど変わり
ません。
ともに、十分に低金利です。

自己資金については、ともに重視しております。
日本政策金融公庫の『新規開業資金』と東京都の創業融資は、形式的には自己資金要件が設定されていませんが、逆に、自己資金がない場合は、ほぼ、可能性はゼロです。

しかし、担保・保証は、ともに、無担保無保証となる制度があります。
会社がつぶれても、社長は、借金の責任を負う必要はありません。
この点は、リスクを負う起業家にとっては、大きなメリットです。

審査の厳しさは、担当者によりますが、全般的には、やや日本政策金融公庫の方が寛大でしょう。

また、日本政策金融公庫の方が、審査に要する期間は、短いです。
制度融資は、信用金庫や信用組合と、信用保証協会のそれぞれで2重に審査があるので、どうしても手間がかかるのです。
創業時は、いかに早くスタートして初期の赤字を抑えるかが大切なので、日本政策金融公庫の審査期間が短いことは大きなメリットです。

日本政策金融公庫と東京都の制度融資は、自己資金の多寡、業種経験、創業計画書や資金繰り計画書の説得力が、調達できるか否かの重用な分岐点となる点は、共通しています。

【公的創業融資の比較表】

比較ポイント日本政策金融公庫の新規開業資金信用保証協会を利用した東京都の創業融資
事業の実績税務申告を2期終えていない方。
決算期の回数が2回未満ということです。
制度融資は、創業時点からの年数です。創業5年以内ならOK
融資限度額上限は3,000万円まで(運転資金は、1,500万円まで)上限は3,500万円
返済期間7年以内(運転資金)
20年以内(設備資金)
運転資金とは、仕入れ代金、人件費、家賃、未回収売掛金などの事業を運営するために必要な資金です。設備資金とは、設備や資産などを購入するための資金です。
7年以内(運転資金)
10年以内(設備資金)
金利2%前後保証料と補助と含めて2%前後
保証料率なし所定の料率。但し、2分の1の補助制度あり。
自己資金の必要性形式的概要ではとくに規定なし形式的概要ではとくに規定なし
担保・保証人無担保・無保証人
担保をつける必要はないが、担保をつければ、その分だけ多く借りることができます。
無担保・無保証人
担保をつける必要はないが、担保をつければ、その分だけ多く借りることができます。
据置期間5年以内
据置期間とは、利息の支払だけで元本の支払を待ってもらえる期間です。事業計画で据置期間の必要性を合理的に説明する必要があります。
実際の据置期間は、制度融資と大差ありません。
1年以内
審査方法創業計画書に基づき、30分から1時間の面談を受けます。創業計画書に基づき審査・面談されます。
申込みから融資実行までの期間1ヶ月1.5~2ヶ月

※許認可が必要な事業では、許認可を受けないと融資はおりません。ただし、申し込み時点では、許認可は不要ですので、融資と許認可手続きを同時に進めることができます。なお、飲食店の場合は、日本政策金融公庫なら営業許可前でも融資が実行されます。

結論的には、日本政策金融公庫での調達を優先した方がよいでしょう。
日本政策金融公庫ですばやく資金調達して、制度融資は、追加融資で活用するのが良策です。
日本政策金融公庫から創業融資に成功すると、信用がつくので、ほかの金融機関でお金が借りやすくなります。
追加融資で利用しようと思っている信用金庫に口座を作り、そこに日本政策金融公庫からの融資額を着金すれば、さらに信用が上積みされますので、さらに評価があがります。

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