公認会計士・税理士
元銀行員、20年にわたり、創業融資、銀行融資、VCからの資金調達を支援てきました。資金調達の累計額は、100億円以上です。
日本政策金融公庫から追加融資を受けるためには何をすべきか?
創業融資を受けた後、業績が創業計画書を下回り、追加の資金が必要になった場合、追加融資を受けるのは、容易ではありません。在庫や売掛金といった運転資金、あるいは、設備資金として追加融資が必要であるというポジティブな筋書きが必要です。さらに、追加融資を受けるためには、以下のポイントを押さえてください。
1.まずは、制度融資を利用する
追加融資は、まずは制度融資を利用して、信用金庫から借りるのが常道です。日本政策金融公庫から創業融資を借りられたという事実は、信用を与えてくれるので、比較的、容易に調達できるはずです。その後、さらに資金が必要になった場合は、日本政策金融公庫からの追加融資も検討する必要があります。制度的には、融資限度額が大きいからです。
追加融資は、制度融資⇒日本政策金融公庫の順で当たりましょう。
2. 追加融資の申請条件を確認する
日本政策金融公庫の追加融資には、申請条件や必要書類があります。まずは、公式サイトや担当者に確認し、求められる条件を満たしているかを確認しましょう。多くの場合、新規開業資金の要件にまだ該当するはずですが、一応、利用者の条件、融資限度額、返済期間、金利などを確認しておいてください。事業開始後7年以内で、借入金額は、数千万程度であれば、該当するので、このステップは、そこまで神経質になる必要はありません。
3. 担当者とのコミュニケーションを維持する
日本政策金融公庫の担当者との良好な関係を築くことも重要です。定期的に連絡を取り、現状を説明することで信頼を得ることができます。将来の追加融資のことを考えて、創業融資を借りっぱなしにするような態度は避けましょう。相手も人間なので、日ごろ丁寧なコンタクトがあるかどうかで、心象はかなり変わってきます。
ちなみに、このコミュニケーションの有無は、スタートアップ創出促進保証制度のガバナンス体制の整備でもチェックされます。制度融資の場合には、融資条件として求められるということです。
4. 滞納しないこと
創業してから、銀行借入金の返済に滞納が発生した場合は、創業融資時の信用調査と同様に厳しく見られます。特に、日本政策金融公庫からの借入返済が滞納した場合、追加融資は実行されません。他行を含めて借入金を滞納している企業に貸す金融機関はありません。信用を築くためにこつこつと返済を続けてください。
5. 試算表で現状を適切に説明する
追加融資を申請する際には、試算表を使って経営状況や実績を示すことが求められます。追加融資が必要となる会社は、赤字の会社が少なくありません。赤字の原因と対策を明確かつ力強く説明できるようにしてください。この説明が弱いと謝絶されます。また、借入の目的が、赤字補填のためだというような説明はしないでください。あくまで、在庫・売掛金等の運転資金、人材採用、設備投資のために追加資金が必要であるという点を強調して説明を行ってください。積極的な投資の側面はあるはずです。むろん、説明したとおりに資金は、使う必要があります。この資金使途の説明を具体化するのが、次の事業計画書の作成のステップになります。
6. 創業計画の見直し
追加融資を受けるためには、創業計画書の見直しが必要です。従来の計画では追加融資が必要であるとは記述していなかったわけですから、当然に修正する必要があります。既存の創業計画書に修正や加筆を加え、追加融資後の資金使途や予想される効果について詳しく説明できる事業計画書を準備しましょう。繰り返しますが、資金使途は運転資金や設備資金といった前向きな投資であることを強調してください。それらの投資が、回収され、業績の向上に貢献する過程を、事業計画書で描いてください。追加融資は、難しい挑戦なので成功させたければ、創業計画書を修正して新たな事業計画書を、ぜひ作成してください。経営者の戦略を再整理するのにも、役立つはずです。
7. 大きな融資額を求めすぎないこと
事業計画書を作成する際には、必要な融資額を明確にし、その使途を具体的に説明できるようにしましょう。不安なのでもっとお金を確保しておきたいと考えがちですが、過剰な融資額を求めると審査が厳しくなる可能性があるため、実際の必要資金に基づいた必要額を設定することが望ましいです。
8. 他行からの借入が増えている場合
他行からの借入が増えている場合、それが積極的な投資のための支出であれば問題ありませんが、実質的に赤字補填のためであったとみなされると、審査は厳しくなります。積極的な投資のために他行からの借入が必要であったという業績推移説明ができるようにしておく必要があります。赤字であったとしても、そういった積極的側面はあったはずです。
ただ、他行からの借入金額が相対的に大きいと、審査はかなり厳しくなります。また、他の金融機関からの借入の中に、高金利の借入や、カードローンがあると、審査落ちの対象となります。ですので将来の追加融資を見越して、高金利の借入には手を出さないでください。
9. 必要書類を整える
上記の準備が整ったら、追加融資申請に必要な書類を整えましょう。通常、以下の書類が必要です:
- 最新の決算書等:申告書、貸借対照表、損益計算書、勘定科目内訳明細書、法人事業概況説明書、資金繰り実績
- 上記の創業計画書を修正して作成した事業計画書:3か年の損益の計画と資金繰りの計画。資金繰り計画の中で、資金使途と返済計画を明確にします。
- 経営の状況を詳しく示す資料:過去の売上の明細、今後の売上予定、受注書など
- 追加融資の使途に関わる資料:設備投資の見積書、顧客との決済条件、仕入れ在庫の見積書
- 納税が確認できる書類:納税証明書、課税証明書など
10.融資申し込みのタイミング
資金調達は、はやめはやめに実行するのが肝要です。できれば、常日頃から、損益計画、資金繰り計画をつくっておいて、はやめはやめにアクションをとるようにしてください。融資申込みは、決算が確定した直後がよいとは言われていますが、審査は、月次決算書で代用できるので、急いでいる場合は決算日まで待つ必要はありません。機動的に融資申し込みをしてください。
できれば、返済実績がある程度、あった方が有利です。もし、がまんできるのであれば、せめて、1~2割は、返済が進むまで待ってください。
11. 審査を通過するためのポイントと面談時の姿勢
審査では、事業の将来的な安定性が重視されます。自社の強みや今後のビジョンを明確に伝えることが審査通過のカギです。この点は、創業融資のときと同じです。
また、真摯な態度も大切です。追加融資の際の面談も、初回の創業融資の面談と同様に、事業計画書に沿って熱意と誠意をもって対応してください。
12.融資決定までの期間
日本政策金融公庫は、すでに企業の情報をある程度もっているので回答に要する時間は、創業融資のときよりも短くなります。2週間程度で終わることが多いです。
ただし、日本政策金融公庫から借入を完済してから、しばらくたっている場合は、企業の情報が削除されていることがあるので、創業融資のときと同じぐらい時間がかかることもあります。これらの点を考慮して資金繰り計画を立ててください。
まとめ
日本政策金融公庫から創業融資のあとに追加融資を受けるためには、担当者とのコミュニケーション、返済実績、現状説明、創業計画書の見直しと事業計画の作成、適切な融資額の設定、他行からの借入の説明、必要書類の整備、適切な融資申込タイミング、面談時の姿勢、融資決定までの期間の考慮が重要です。これらのステップを確実に踏むことで、追加融資の審査をスムーズに進めることができるでしょう。